研究課題/領域番号 |
17K05567
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 健太朗 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (30535042)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲージ理論 / 境界条件 / テータ角 / スピノル場 / サイバーグ双対性 |
研究実績の概要 |
研究実施計画の中心をなすのが2次元(2,2)超対称ゲージ理論におけるサイバーグ双対性のもとでのDブレーンの対応関係を決定することであるが、B型の超対称性を保つDブレーンについてこれを実行するために必要なのが「2次元ゲージ理論を境界を持つ面上に定式化するとき、境界上の自由度はゲージ変換のもとでどの様に変換されるか?」を理解することである。
スピノル場を持たないボゾニックな理論においては、昨年度にこの問題に対する一般的解答を得ている。2次元ゲージ理論は「テータ角」と呼ばれるトポロジカルな結合定数を持つが、ボゾニックな理論においてはそれはゲージ群Gの分類空間EGのU(1)係数2次コホモロジー類と一対一の関係にあり、さらにそれはGのU(1)による平坦な中心拡大と一対一の関係にある。境界上の自由度はそのような中心拡大の表現をなす、というのがその解答であった。しかしながら超対称理論はスピノル場を持つので、この結果をスピノル場を持つフェルミオニックな理論に拡張する必要がある。平成30年度はそのための準備的な研究を行った。「対称性によって保護されたトポロジカル相」の最近の研究において、フェルミオニックな理論におけるテータ角はEGのU(1)係数スピン・コボルディズム類と対応関係を持つことが指摘されている。まずはこれを確認することに努め、さらに境界上の自由度とどの様に関わるのかについて考察した。
また、2次元(2,2)超対称ゲージ理論におけるA型の超対称性を保つDブレーンについての研究を開始した。これはミラー対称性及びサイバーグ双対性のもとでのDブレーンの対応関係を理解するための第一歩となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べた通り、平成30年度に行った研究は前年度に引き続き「サイバーグ双対性のもとでのDブレーンの対応関係」のための準備として位置付けられるものであり、未だにサイバーグ双対性本体に手をつけられていない状況から見て「遅れている」と評価すべき事態である。そうなった理由としてはスピン・コボルディズムを含む代数的位相幾何学やテータ角に関連する量子異常などの周辺事情を理解するために想定以上の学習や研究が必要であったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
まずはこれまでの準備的な研究を完結させ、フェルミオニックなゲージ理論における境界上の自由度のゲージ変換性についてのはっきりした結論を得ることを目指す。その上で、いよいよ「サイバーグ双対性のもとでのDブレーンの対応関係を明らかにする」という主目的の一つに取り掛かりたい。また、この準備的研究は超対称理論の枠内に収まらない一般の理論に関する部分を含んでおり、トポロジカルな結合定数が理論に及ぼす影響について、この研究を発展させる新たな方向を探りたい。同時にA型の超対称性を保つDブレーンについての研究を発展させ、ミラー対称性のもとでのDブレーンの対応関係に応用したい。さらに、「計画」に掲げてはいたが手をつけられなかった他の課題、すなわちDブレーンの安定性条件、3,4次元のゲージ理論の双対性のもとでの境界条件の対応関係、についても着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では「サイバーグ双対性のもとでのB型Dブレーンの対応関係」について議論するためJ. Rennemoを本研究費を用いて招待する予定であったが、準備的研究が予想以上に長引いたため、それには時期尚早と判断せざるを得なかった。今年度は、準備的研究を可能な限り早く完結させ、本論に取り掛かる予定である。また、代数幾何学における射影双対性がサイバーグ双対性と関係していることを示唆する例が存在している。この分野で活発に研究をしているA. KuznetsovやN.C. Leungを招待してその関係について探求したい。また、ゲージ理論におけるA型Dブレーンを数学的に研究しているG. XuやG. Tianを招待し、意見交換したい。
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