超流動ダイナミクスを研究する強力な方法として機械的応答の周波数依存を測定することがあげられる。平面基盤上の2次元4He薄膜のKosterlitz-Thouless(KT)超流動転移は、渦対の解離が本質的な役割を果たすトポロジカル転移として、理論・実験の両面から活発に研究されてきた。しかし、そのダイナミクスと非線形効果については実験的な検証が十分に実施されたとは言い難い。また、KT理論が破綻するような高周波極限における超流動応答は自明では無い問題となっている。平成31年度は前年度のベルク4Heの音響インピーダンス測定の成果をもとに、水晶マイクロバランス法(QCM)を使った高周波における2次元4He超流動のダイナミクスと非線形効果の研究(60~340MHz)を試みた。水晶マイクロバランス(QCM)法はオーバートーン発振の利用により、同一状況下(基盤、膜厚)の4He薄膜に対して複数の周波数による測定が可能であり、動的KT転移の実験研究をする上で極めて有効なプローブとなってきた。その結果、超流動オンセットが0.9 K付近の膜厚において、測定周波数が高くなるにつれて分解能と長期安定度が悪くなるが、すべての周波数においてエネルギー散逸ピークを伴う超流動応答の観測に成功した。また2次元超流動の動的特徴である超流動オンセットの周波数依存も明瞭に捉えることができた。本研究は、マイクロ波帯(300MHz以上)において超流動応答を測定できることを示しており、KT理論が破綻する高周波極限における超流動性の研究に道を開くものである。
|