多次元輻射輸送方程式の解に現れる固有モード間の、双直交関係を得ることを目指している。1次元の場合にはこの固有モードは特異固有関数と呼ばれる超関数を使って書かれるが、本研究の固有モードは多次元版の特異固有関数を用いて得られる。全角度で積分する場合の直交関係は全領域の直交関係と呼ばれ、すでに重み関数がわかっている。ところが、境界がある場合には半領域の直交関係が必要である。多次元の輻射輸送方程式については、半領域の(双)直交関係にどのような重み関数が登場するか、まったく未知の状況である。1次元理論から、非等方散乱の場合にはさらに、双直交の関係が必要なことが予想される。多次元輻射輸送方程式の解を得るためには、解を固有モードで展開して、その展開係数を求める必要がある。展開係数を計算するために、直交関係や双直交関係を確立することが必須になる。
特異固有関数の方法は基本的に変数分離法である。展開係数を数値的に求めることにすると、半領域での直交関係に頼らずに全領域の直交関係だけを使うことで、固有モードを用いて3次元輻射輸送方程式の数値計算手法を作ることができる。特に、以前の研究で得られた3次元FN法に着目した。これを逆問題に適用し、光トモグラフィーの数値手法を構築した。従来の光トモグラフィーのように光ファイバーによる点光源で生体の各点を照射するのでなく、空間的に振動する構造照射による光トモグラフィーの数値計算手法を開発した。
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