蛍光トモグラフィーについて、励起光と蛍光のそれぞれを支配する輻射輸送方程式に拡散近似を施すことにより、二つの拡散方程式が得られる。この二つの結合した拡散方程式に対して、蛍光色素の吸収係数を決める逆問題を考えた。励起光の拡散方程式において蛍光色素の吸収係数を無視した場合のの逆問題の解の誤差を見積もった。また、逆問題の解が一意に得られる状況について調べた。 輻射輸送方程式の解析解を利用した数値手法を提案した。3次元解析的離散方位法と名付けたこの数値手法では、輻射輸送方程式の積分項をまず離散化する。その上で、斉次方程式を解析的に解く。すると解は超関数を含まず数値計算に乗せやすい形で求まる。もともと求めたかった輻射輸送方程式の数値解は、斉次方程式の解の重ね合わせとして表すことができる。 期間全体を通して、解析解を利用した輻射輸送方程式の数値手法を提案することができ、また時間非整数階など新奇な輻射輸送方程式についても研究を行った。さらに、多孔質媒体を水に混ざって移動する分子の輸送の支配方程式が輻射輸送方程式であることを明らかにした。逆問題の観点からも研究を実施し、乱数を用いる方法や、空間周波数領域の測定に対応する光トモグラフィーの数値手法の提案など行った。前者では拡散近似を施すことにより拡散方程式に対する逆問題に帰着させた。後者では解析解を利用することにより、輻射輸送方程式そのものに対する係数決定逆問題の数値手法を作った。
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