研究課題/領域番号 |
17K05573
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
芳松 克則 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (70377802)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 乱流 / 計算物理 / 直接数値計算 / 自己相似性 / 不変性 / 普遍的構造 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大規模直接数値計算(DNS)により(1)乱流の大スケールの時間不変性に起因する乱流の減衰則、ならびに(2)典型的な非等方外力の乱流の小スケールへの影響に関する統計則、を解明することにある。規範的な乱流である3次元非圧縮性一様乱流を対象に研究を実施した。行ったDNSは、エリアスエラーを除去したフーリエスペクトル法を用いた高精度なものであり、格子点数は1024^3と大規模である。平成29年度に得られた成果の概要を以下に示す。 大スケールでの自己相似性と大スケールの時間不変性を用いて、任意の非等方性、非対称性をもつ初期インパルスがゼロでない自由減衰乱流の減衰則を導出した。さらに、ヘリシティの減衰則も求めた。ヘリシティの存在のため鏡面非対称性をもたない乱流において、乱流が鏡面対称な場に戻らないことが分かった。得られた減衰則、大スケールでの不変性や自己相似性を3次元周期境界条件下の自由減衰乱流のDNSにより検証した。エネルギースペクトル、ヘリシティスペクトルが低波数側で、時間に依存しないこと、つまり、大スケールで不変であることを示した。また、各時刻で、適当に規格化されたエネルギースペクトルが良く重なることも示した。予言された減衰則、鏡面非対称性の保持もよく再現した。 非等方な外力を受けた乱流中のパッシブスカラー乱流の減衰則も、大スケールでの自己相似性と大スケールの時間不変性を用いて得た。スカラー場の長さスケールの比は、速度場の長さスケールの比の時間依存性に依らず、一定になること、すなわち、スカラー場の非等方性が、速度場の非等方性に隷属しないことをDNSにより示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
任意の非等方性、非対称性を持った、初期インパルスがゼロでない自由減衰乱流の減衰則をDNSにより検証できたから。ヘリシティの存在のため鏡面非対称性をもたない乱流において、乱流が鏡面対称な場に戻らないことを理論だけでなく、DNSでも示すことができた。また、大スケールの時間不変性をもつパッシブスカラー乱流においても、その非等方性が速度場の非等方性に従わないことをDNSにおいても確証できた。この二つの話題について、現在、論文原稿を作成中である。さらに、強い密度成層を受けた粘性が支配的な成層流れ、速度の異成分間の相関のある乱流の予備的なDNSも実施でき、構築中の理論と整合する結果を得た。よって、平成30年度の研究の準備も行えたから。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、大規模DNSと理論解析により、乱流の大スケールの時間不変性に起因する乱流の減衰則の研究を実施する。前年度の成果を取りまとめるのに加え、強い密度成層を受けた粘性が支配的な成層流れ、速度の異成分間の相関のある乱流の減衰則について研究を進める。また、次年度に向けて、初期インパルスがゼロの乱流の予備的DNSも実施する。統計量の長時間平均をとるため、典型的な非等方外力の乱流の小スケールへの影響に関する統計則を調べるため、ランダムな外力を導入する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
乱流場のDNSデータの保存量を減らしたため、名古屋大学スーパーコンピュータのデータ保持料が見積もりよりも安価に済んだ。また、やむを得ぬ事情により国内出張および海外出張を控えたから。未使用額は、研究を一層効率的に進め、成果を発表するための渡航費・滞在費に充てる。
|