研究課題/領域番号 |
17K05577
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡邉 陽介 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30304033)
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研究分担者 |
土井 祐介 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10403172)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非線形局在振動 / エネルギー局在 / 周期構造 / 離散系 / 非線形格子 |
研究実績の概要 |
非線形局在モード(Intrinsic Localized Mode: ILM)の励起は今日、非線形離散周期構造における、普遍的なエネルギー局在現象として認知されている。筆者は先行研究で、最もよく知られた非線形格子の一つであるFermi-Pasta-Ulam-β型の特性を模した、「押し引き」に対して対称な応答をする非線形バネの作製と量産に成功し、これらのバネと振動子からなる連成振動子列および加振装置を自作し、この系におけるILMの励起およびその伝播の実証に成功した。実験で得られた結果は力学モデルに対する数値計算の結果と良い一致を示し、実験的研究が極めて少ないILM研究の分野においてインパクトのある成果を残すことができた。 近年1次元系におけるILMに関する研究では解析的、数値的にかなりの進展がみられた。これに対し高次元系のILMに関する研究は少数で、具体的な材料や物性を想定した研究が進められ、個別的になっているのが現状である。より一般的に周期系の高次元化が、ILMの存在やILMの伝播特性に対してどのような影響を与えるのかについては、ILM研究者らの中でも明確な答えが出されていない。 本研究ではまずは先行研究で用いた実験装置を改良し、シンプルな2次元周期系を構成する。本年度は振動子列の一部分にオンサイトの効果を取り入れた予備実験をおこなった。この実験結果は力学モデルに対する数値計算結果と定性的に良い一致を示した。この結果は9月に鳥取大学でおこなわれた非線形エネルギー輸送に関する研究会にて報告した。また高次元系に対する計算では演算回数とパラメータの数が増加するため、高性能のコンピュータを前倒しで購入し、計算機環境を整えた。反復法を用いて得られた局在振動モードについては1月に京都で開催されたILMの国際シンポジウムにて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究とは異なる新しい非線形バネの製作が遅れているため。実験装置自体の改良と並行して進める予定であったが、改良方法の見直しや、数値計算の力学モデルについての検討が必要となり、時間を割くことができなかった。次年度は非線形バネの製作を進め、量産化、力学特性の測定をおこなう予定。オンサイト効果を取り入れた予備実験に関しては良い検証結果が得られている。これについても更に装置の拡張をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
・新しい非線形バネの製作をおこなう。 ・オンサイト的な復元効果を取り入れた予備実験の、装置の拡張をおこなう。 ・励起される移動型ILMの詳細な実験データの取得をおこなう。 ・数値計算による解析を並行しておこない、理論との比較検討をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)非線形バネの製作が遅れているため。予定していた国内の研究者との打ち合わせや研究会の会場が近郊に集中したため。 (使用計画)実験装置作製のための消耗品の購入および研究打ち合わせ旅費に充てる予定。
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