非線形局在モード(Intrinsic Localized Mode: ILM)の励起は今日、非線形離散周期構造における、普遍的なエネルギー局在現象として認知されている。筆者は先行研究で、最もよく知られた非線形格子の一つであるFermi-Pasta-Ulam (FPU)-β型の特性を模した連成振動子列および加振装置を自作し、この系におけるILMの励起およびその伝播の実証に成功した。本課題ではこの実験装置の2次元化のための検討を進めてきた。周期系の2次元化は系内の質点の振動に対してオンサイト的な効果としてはたらくことが予想される。本年度はまず前年度に引き続き、移動型ILMに対するオンサイト効果の実証のための装置の拡張作業を進めた。次にオンサイト効果の大きさを変化させILMの伝播速度の変化を観測した。実験では質点列の一部にオンサイト効果を与える線形バネを取り付け、バネ定数の大きさを変えてILMの伝播速度を調べた。本実験で調べた範囲では、バネ定数を大きくするとILMの伝播速度が大きくなることがわかった。得られた結果を9月の国内学会(日本機械学会年次大会)および11月に開催された非線形局在に関する国際会議(いずれもオンライン開催)にて報告し、様々な特異な系での振動現象に興味を持っている研究者や活発にILM研究をおこなっている研究者らと議論をおこなった。また本実験およびこれに先立つ予備実験の結果は、オンサイト効果の入れ方を変える(非均一なオンサイト効果の分布や非対称な復元力を与えるオンサイト効果等)によりILMの伝播をより能動的に制御できる可能性を示唆している。
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