今後の研究の推進方策 |
2次元格子に穴を開ける形で作られるフラクタル格子上のイジング模型では、相転移温度で比熱が極大とならない。この奇妙な性質を物理的に理解する目的で、自由度を絞った実空間繰り込み群や、半定量的な論理形式の構築について、まず検討して行く。行列積状態から木構造への変換については、必要な計算をなるべく局所的に限定できるよう計算手順を見直し、計算量を現実的なものに抑える工夫について、更に検討して行きたい。また、系のエンタングルメント構造を木構造に反映することが計算精度の向上に重要である事から、行列積状態のどこから木構造化して行くか、その順番についても検討して行く。相転移の一端を把握できた、正方格子上の12状態・離散ハイゼンベルグ模型については、その非自明な臨界指数の由来を探って行く。離散ハイゼンベルグ模型は、これまで正多面体模型を中心に研究されて来たが、対象を少し広げ、準正多面体模型などについても角転送行列くりこみ群を用いた数値解析を行い、同様に非自明な臨界指数を得るかどうか、確かめて行く。また、大規模数値計算的を目的とした挑戦として、サイト自由度が20である、正20面体模型を取り扱い得る計算手段についても検討したい。数理物理的な興味から、内部空間が4次元球で表現される離散多自由度模型についての相転移解析にも新たに着手できればと考えている。3次元の正多面体に対応する、4次元の正多胞体は 5, 8, 16, 24, 120, 600 の6種類あり、24自由度までは現在の計算能力で、定量解析に手が届くと思われる。120, 600 自由度の系については、サイト自由度そのものを小さく繰り込んでしまうことが必須であり、その手法について検討して行く。また、角転送行列繰り込み群の、臨界領域での安定な計算方法も検討したい。以上取り上げたそれぞれの目標へ向け、研究を推進して行く。
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