研究課題/領域番号 |
17K05580
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中村 正明 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (50339107)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 動的スピン磁化率 / トポロジカル絶縁体 / カゴメ格子 / 厳密基底状態 / ハバード模型 / エンタングルメントエントロピー / ひねり演算子 / 朝永・Luttinger液体 |
研究実績の概要 |
申請者が提唱した動的スピン磁化率を用いたトポロジカル絶縁体の検出方法の議論はスピンが保存するKane-Mele模型に対するものであったが、これをトポロジカル絶縁体のより現実的な模型であるBernevig-Hughes-Zhang(BHZ)模型にも応用した。Kane-Mele模型では磁場をかけたときの動的スピン磁化率のピークのうち、一番周波数の小さい領域に現れる特殊なピークの有無でトポロジカル状態の有無が特定できるのに対し、BHZ模型ではピークが磁場の変化に応じて高周波数側か、低周波数側のどちらに移動するかによってトポロジカル相であるか否かが判断できることがわかった。
また、カゴメ格子上の拡張されたハバード模型について、射影演算子を電子スピンが上向き、あるいは下向きの二つの成分の積から構成する方法を用いて、プラケット状態が厳密基底状態となることを議論し、そのパラメータ領域を決定した。さらに密度行列繰り込み群による数値計算の結果との整合性について調べ、エンタングルメントエントロピーの計算を行った。またこの系では電子のスピンの向きに応じて局所的な電流が互いに逆回りに流れるような、一種のトポロジカル状態も厳密に構成しうることを議論した。
さらに、1次元量子系においてエネルギーギャップの有無を調べるための、Lieb-Schultz-Mattis定理で用いられるひねり演算子に関して、これを通常考えられているような基底状態ではなく、励起状態で期待値を考えた場合について議論した。この結果、朝永・Luttinger液体においてその絶対値は普遍的な値1/2を取ることがわかり、このことを自由フェルミオンや、ボゾン化の方法を用いて説明することに成功した。そして、その符号がトポロジカルな情報を反映していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究についてはそれぞれ学会発表を行い、カゴメ格子に関する研究についてはすでに論文を投稿、受理されており、1次元量子系のひねり演算子に関する研究も論文がほぼ完成し、投稿準備の段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
1次元電子系のひねり演算子を用いたトポロジカル相の検出に関する議論を電子系だけでなく、量子スピン系にも拡張していきたい。また、カゴメ格子に関する厳密基底状態に関しては、同様に議論をチェッカーボードやパイロクロア格子へも適用し、またハミルトニアンを射影演算子への分解をより精密に行う計算方法を考えていく。さらに、グラフェンに関して、多層系に起こりうるトポロジカル状態や、そこでの電子間相互作用の効果について調べて行こうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は購入予定のワークステーションの購入を延期したので、平成30年度に購入をする予定である。また、毎月1回の東京方面への研究打ち合わせや、学会、および研究会、また年末にはアメリカ物理学会への参加を予定している。
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