研究実績の概要 |
疑似8の字軌道であるベルヌーイのレムニスケート上を等質量3体が追いかけっこをする場合,重心が原点,全角運動量がゼロ,慣性モーメントが一定になる性質がある.これを反映して,3体からの接線が平面上の1点で交わり,3体からの法線も平面上の1点で交わり,さらにこれら2点は3体の外接円上にあって,外接円の直径の両端に位置する. 距離の2乗に反比例する強力ポテンシャル下でも,重心原点,全角運動量ゼロ,慣性モーメントを一定に保つ等質量3体の8の字解があって,3体の外接円は三接線交点Ctと三法線交点Cnを直径とする円になっている.ただし,その8の字解はまだ数値解に過ぎず,解析的性質に関する情報は皆無である.そこで重心原点,全角運動量ゼロ,慣性モーメント一定の8の字軌道と3体の外接円の交点のうち,3体を除く点Pに着目し,Ct,Cnの座標,PとCtを結ぶ直線の勾配αt,PとCnを結ぶ直線の勾配αn,ならびにPでの勾配関数によってPの座標(8の字軌道上の点)を表す手法を考案した(αt・αn = -1の直交関係が成立).ベルヌーイのレムニスケートを例に,この手法が確かに有効であることまでは確認した. この研究に並行して,北里大学の福田,藤原両氏と等質量3体8の字解の分岐で,特に非平面解への分岐を数値計算で調べた.引力ポテンシャルの次数aを変化させると,3体8の字解は,いくつかのaの値で同じ周期をもつ周期解に分岐する.a=0.9966から分岐する周期解はa=1でSimoのH解に至る.その周期解をaが小さい方に追いかけると,a=0.8460で非平面周期解に分岐することを確認した. 等質量3体8の字解の分岐を数値計算で詳しく調べるにつけ,三体問題の奥深さに改めて驚かされた.研究期間中に解析的な平面三体舞踏解には至らなかったが,解が満たすべき構造からのアタックを今後も続け,新たな道を切り拓きたい.
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