研究課題/領域番号 |
17K05590
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
谷澤 俊弘 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 教授 (60311106)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / 臨界現象 / 相転移 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
令和元年度は,これまでに整備したソフトウェア開発環境を用い,前年度までの計算結果を基盤として,引き続き,ノード間に強い次数相関を持つネットワークに関する数値シミュレーションを行った。 平成30年度のシミュレーションでは,次数分布がポアソン型であるErdos-Renyiネットワークから出発し,次数相関を強くする方向にノード間のエッジを交換していくことで,正の次数相関を持つネットワークを生成したが,本年度は,極端に強い正の次数相関を持つ玉ねぎ構造ネットワークから出発し,エッジ交換を行うことで,より強い次数相関を持つネットワークについてのシミュレーションを行った。現在までのところ,そのいずれにおいても,有限サイズクラスター分布の転移点上でのピーク消失は見られないことを確認している。 2007年,Nohのシミュレーションでは,正相関の場合のみのピーク消失が報告されており,したがって,現在,我々が得ている結果は,Nohの結果とは相容れないものであるが,両者が用いたネットワーク構造は異なっており,次数相関の入り方も同等ではない。したがって,この食い違いがネットワーク構造の違いに起因するものなのか,あるいは,他に起因するものなのかどうかについては,さらなる解析が必要である。この点においては,数値シミュレーションによる解析だけでは不十分であり,厳密な方程式系から出発する解析的手法が必要で,これが本年度の研究の展開の方向となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,ノード結合間に強い次数相関を持つ複雑ネットワーク上におけるパーコレーション転移を解析的手法と数値計算の両面から精査しようとするものであり,令和元年度までで数値計算を用いたシミュレーション結果を得られたことで,令和2年度における解析に確固たる基盤が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところNohの得た結果と本研究での数値シミュレーション結果の間には差異がある。この違いが用いたネットワーク構造の特性にどの程度依存しているのかを解明するためには,解析的手法が必要である。令和2年度は解析的手法も併用して,この点を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題が関係するネットワーク科学および複雑系に関する重要な国際会議として、NetSci2020(2020年7月6日から 10日)、CCS (Conference on Complex Systems) 2020(2020年10月19日から23日)等の開催が予定されており、成果をそれらの国際会議で発表し周知することが本研究課題の目的をより精緻に達成するために必要であると考え,2019年度までの配分経費の一部を2020年度に使用することとした。2019年度末からの新型コロナウィルス感染症蔓延の影響で,これらの国際会議の開催形態については現在調整中となっているが,現地開催が決定されれば,これらの経費を有効に使用する予定である。
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