研究課題/領域番号 |
17K05591
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
研究代表者 |
加藤 豪 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, メディア情報研究部, 主任研究員 (20396188)
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研究分担者 |
丸山 耕司 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 客員准教授 (00425646)
尾張 正樹 静岡大学, 情報学部, 准教授 (80723444)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 量子システム / 間接制御 |
研究実績の概要 |
量子システムを間接制御するとは、任意の制御ができる直接空間を使って、ある程度制限された相互作用でのみしか制御できない間接空間を制御することである。与えられた条件で実現可能な制御は時間発展の生成子であるエルミート行列のセットで表現されるが、これは、直接空間への任意の生成子と相互作用の生成子を生成元とする、動的リー代数によって表現されることが知られている。そのため、与えられた量子システムの間接制御の能力を議論するためには、その動的リー代数を調べることが、議論の土台となる。 30年度の研究では、29年度に得られた間接制御における動的リー代数の一般的分類を具体的な系に適用したときにどのようになるかに関して複数の例を使って研究を重ねた。その結果分類と具体論との関係が見えるようになってきた。例えば、具体的な対称性が一般的分類においてどのように対応するかを明らかにしていった。また、スピン系などにおいても、わずかな状況の変化で、可能な操作の集合が急激に増加する現象が容易に起こりうることも発見した。さらには、分類分けされたそれぞれの形を実現する具体例も作り上げることに成功した。 これらの結論は、外部からのノイズの抑制を目的として、外部との相互作用を制限し、間接制御によって量子情報処理システムの実現を目指す場合に、操作可能性の保持と相互作用の低減という相反する要求をどのように調和させるかという最も重要な観点において、「対称性の低い相互作用が良い。」という従来の一般論を超えて、要求を満たす指針を与えたことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の抽象的な成果に加えて、具体的な描像がはっきりしてきており、着実に本質を捉えだしてきている。そのため、作り上げた数学的枠組に対して直感を伴って扱うことができるようになってきた。これはこれまでの成果を、より大きな知識へと拡大するための基礎となる作業であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
具体的例を扱うに従って、デコヒーレンスを今の枠組みで直接扱うのは困難であるとの直感が得られるに至った。他方、デコヒーレンスが無い場合は、所定の操作に必要な最低時間などを数学的に妥当に一般的に定義することは可能であることがわかった。これまでは、所望操作実現の可不可を議論する数学的枠組みを構築してきていたが、今後は、本年度に得た直感を利用しつつ、これまでの数学的な枠組を実行時間に着目して拡張することを試みていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定してた、デコヒーレンスがあった場合での解析が困難であることがわかったため、研究の方向に修正が加わったた。そのために、当初の予定での計算機資源の購入を見送った。来年度は、変更された方向性を洗練するために必要な経費として利用する予定。
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