今年度は冷却原子気体のボース・アインシュタイン凝縮体および量子物理学への機械学習の応用に関して研究成果があがった。 1つ目は、ボース・アインシュタイン凝縮体における複数量子渦輪の運動に関する研究である。二本の量子渦輪を軸対称に配置すると、リープフロッグ運動と呼ばれる運動が長時間安定に保たれることが知られている。我々は3本の渦輪の場合に、渦輪の初期配置によって、リープフロッグ運動が長時間保たれる場合と、軸対称性が自発的に破れて渦輪が崩壊する場合があることを数値的に見出し、安定性解析などを行った。 2つ目は、2成分ボース・アインシュタイン凝縮体におけるラビ振動に関する研究である。学習院大学の実験グループと共同で、長時間安定にラビ振動を観測したところ、凝縮体に特定波数の励起が発生することを実験的に見出した。この励起は、2成分間で状態が移り変わる際に、原子間相互作用が実効的に変化することに起因している。さらにこの現象を理論的に解析したところ、パラメトリック共鳴によるファラデーパターン生成と深く関係していることがわかった。1成分系の場合は密度波の励起周波数と相互作用の振動数の間で共鳴が起こるのだが、2成分系では、密度波に加えてスピン波も関与することにより、複数の共鳴が起こることが明らかになった。 3つ目は、有限温度の量子多体状態をニューラルネットワークを用いて求める研究である。これまで、基底状態などの純粋状態をニューラルネットワークを用いて求める研究は行われてきたが、有限温度の密度演算子にこの方法を応用したのは我々が最初である。深層畳み込みニューラルネットワークを用いることでボース・ハバード模型の有限温度状態が高精度で得られることを示した。
|