研究課題/領域番号 |
17K05599
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
菜嶋 茂喜 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (90347485)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | テラヘルツ波 / エンハンスメント共振器 / テラヘルツ-キャビティエンハンスト分光 / 分光センシング / 増強効果 / テラヘルツ時間領域分光法 / フェムト秒レーザー |
研究実績の概要 |
本研究では,共振器構造を用いて低出力領域のテラヘルツ波(以後,THz波と記す)の増強する(=THz-エンハンスメント共振)手法を提案し,それを高感度な吸収分光法(=キャビティエンハンスト吸収分光法)として応用できるようにすることを目指して,その増強技術の向上に取り組んでいる. 1年目のH29年度では,コンパクトなTHz-エンハンスメント共振器にする為に自作した共振器長30 cmの高繰り返しフェムト秒チタンサファイアレーザーを一部改良し,高出力化と発振の安定化の両立を達成した.具体的には外部への取り出し方法とその割合を見直したことで,市販品の数倍に相当する1 nJ近くのパルスエネルギーを有した10フェムト秒台の光パルスを,フリーランな状態で1日近い連続発振が可能となった.そしてその励起レーザーを用いてTHz波を発生し,試作した外部型のTHz-エンハンスメント共振器に導入した結果,0.4 THz付近において設計された共振器の増強度(=2.97倍)とほぼ一致する結果が得られた.THz波と共振器との結合効率は未だ小さくすることが十分可能なことから,今後更に高い増強度が見込める見通しが得られた.一方,理論上外部型よりも高い増強効果が望める内部型のTHz-エンハンスメント共振器を初めて試作し,先述の励起レーザーを導入した結果,0.3 THz付近において約24倍の増強を達成した.この増強効果により,THz波と物質との相互作用する時間,即ち吸収の影響を従来法よりも約5倍に増大することに成功したことを意味している.これらの実験では,共振器長を制御していないフリーランな共振器状況にも関わらずTHz-エンハンスメント共振器と励起レーザーの共振器が同期状態を維持しており,簡便にTHz波の増強を達成できることを実証した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究テーマ遂行にとって,初年度に計画した励起レーザーの出力特性の向上と安定動作発振を達成し,それを実際に外部型のTHz-エンハンスメント共振器へ導入することを実行できている.その成果として,テラヘルツ波を共振器長の制御無しで容易に設計値レベルまで増強できることを実証できた.また,当初計画になかった,内部型のTHz-エンハンスメント共振器への導入も実行し,更なる増強を達成した.これらのことから,当初の計画以上に進展していると評価する.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に取り組むことができた外部型と内部型のTHz-エンハンスメント共振器を2大柱として,それぞれの共振器を部分改良,または新規共振器を提案していくことを予定している.初年度に試作した共振器においては,実験を通して得られた技術課題(例えば,アウトプットカプラーの結合効率の見直しや回折損失や収差の問題,ビームモードの品質など)について,それぞれ数値計算などを活用しながら検討し,一つずつ改善を試みていくことにする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
THz波分光実験で予定していた電子機器の購入費用として考えていたが,希望する物品の費用に足らなかったので,次年度使用額として扱い,次年度の予算と合わせて購入することにした.
|