研究課題
本年度は、アクティブ液晶の自己駆動と変形の解析を行った。まず、モデルの次元解析から、自発運動への転移はアクティブストレスと、液晶場の流体への応答の項によって特徴づけられることを明らかにした。自発運動が生じる物理的な起源を明らかにするために、液滴内部に働く力の分布を多重極展開で表現し、アクティブストレスは双極子的な力の場にも関わらず、双極子が不均一に分布することによって、四重極的な力の場が生成され自発運動へとつながることを示すことで、アクティブ液晶液滴が自発的に運動する条件を導出した。この配向場は、一様配向が不安定化した際に最初に生じる配向の摂動である。つまり、配向の摂動が流れ場を生成しそれがさらに配向場を乱す、そしてその配向場は自発運動と結びついたものであるから、ある閾値以上のアクティブストレスで自発運動への転位が起きるということが起きる。上記の簡略化したモデルを用いて、液滴の界面がシャープな極限において、液晶場と流体場を解析的に計算することによって、転移点を計算することができた。また、数値計算によって、アクティブストレスを大きくしていくと、静止状態から自発並進運動、回転運動、ジグザグ運動、そしてランダムな運動が生じることを明らかにした。このような詳細な相図は、GPUによる計算の高速化を行うことによってはじめて可能になったものである。本結果の一部はJournal of Chemical Physics誌に掲載されている。また、細胞に近い環境としてMinたんぱく質の波の形成についてのモデルの解析も慶応大学の藤原講師と光山博士の実験グループと共同で行った。球面とその内部にたんぱく質濃度を持つ反応拡散系としてモデル化し、実際に波が生じることを示した。また、閉じ込めの効果によって波が出現する条件が変化することを理論的に示した。この実験と理論の結果はeLife誌に掲載されている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
The Journal of Chemical Physics
巻: 150 ページ: 184904~184904
https://doi.org/10.1063/1.5090790
eLife
巻: 8 ページ: e44591
10.7554/eLife.44591
http://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/~yoshinaga/