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2017 年度 実施状況報告書

非線形ダイナミクスに基づくソフトマター破壊の統一的理解

研究課題

研究課題/領域番号 17K05609
研究機関横浜国立大学

研究代表者

田中 良巳  横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (10315830)

研究分担者 高石 武史  広島国際学院大学, 工学部, 教授 (00268666)
山口 哲生  九州大学, 工学研究院, 准教授 (20466783)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード破壊現象 / 非線型ダイナミクス / 粘弾性
研究実績の概要

実験面では,粘弾性液体であるCTAB溶液のレオロジー特性と伸長歪を与えたときの切断特性との関連を実験的に調べた。特に,溶液中に粗大微粒子を分散させて応力場を乱した場合の効果に注目した。まず,レオメーターを用いて定常せん断を与えた時のフローカープ(せん断応力とせん断歪速度の関係)を詳細に調べた。用いたCTAB溶液は,ストレスプラトーを示すが,添加する微粒子の体積分率を増加させるに伴い,プラトーの幅が減少し体積分率=0.3程度において,フローカーブは単調増加になった。また,自作の試験機をもちいてCTAB溶液の一軸伸長実験を実施し,試料である液柱型の試料溶液の切断挙動を高速カメラによって観察した。粗大粒子の添加に伴って,切断挙動が通常のニュートンン粘性液体のような毛管切断を示しやすくなることが明らかになった。
理論面ではまず,上述のフローカーブの変化を理解するための統計モデルの構築を試みた。さらに粘弾性流体における亀裂進展を伴う破壊を議論する枠組みの構築に着手した。具体的には,研究分担者の高石と連携研究者の木村によって構築された勾配系型フェーズフィールド破壊モデルをマクスウェル流体に拡張した。H29年度は,変位場が1成分(スカラー)で与えられるmode-IIIタイプの荷重条件を扱った。系の粘弾性緩和時間と境界駆動を特徴づける歪速度の大小関係に依存して,粘弾性緩和時間が特徴的歪速度の逆数より大きい時は,初期き裂が脆性的に伸展するのに対して,逆の条件では,流体的な歪の増大(機械モデルでは``ダッシュポット”の変形)が亀裂先端付近で生じ弾性エネルギーを駆動力とするき裂伸展は起きない,という粘弾性流体の破壊に特徴的な振る舞いが定性的に再現された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実験面では,粘弾性体のき裂伸展挙動の新たな特徴づけになるような実験系の構築が不十分である。理論面では,実験との比較を行うために必要なフルモードの弾性や粘弾性に対するモデル方程式の構築と数値的調査が検討課題として残った。

今後の研究の推進方策

粘弾性体破壊の実験研究を推進する。具体的には,荷重速度に応じて,伸長に対する切断挙動が,液体的な毛管破壊型(capillary breaking)から,明確な亀裂形成・伸展を伴う疑脆性破壊型に遷移することが知られているテレケリックポリマー溶液を試料として,その粘弾性挙動と破壊挙動の対応を詳細に調べる。また上述のCTAB溶液でみられた微粒子分散による``延性”の向上がテレケリック系でも生じるか否かをしらべる。
理論的には,まず線形マクスウェル流体におけるMode-IおよびMode-II型き裂をとりあつかえるようにモデルを拡張する。さらに実験的検討をすすめる予定の微粒子分散効果なども弾性率の空間分布として表現し,延性向上が見られるかどうかを検討する。

次年度使用額が生じた理由

H29年度に実施した実験検討の結果,当初予定していた高速ビデオカメラを用いた,粘弾性液体の裂先端付近の変形場の定量的可視化を,十分な精度を持って行うことが困難なことが判明した。そのため備品として導入予定であった高速カメラの購入を中止した。その代わり,応力場を乱す不純物である粗大ビーズ(直径数十ミクロン)を粘弾性液体に導入した場合のき裂伸展挙動をの変化の実験的に調べた。持ち越した予算は,この不純物導入系の実験を詳細に行うための装置作成費用に振り向ける。

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公開日: 2018-12-17  

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