研究実績の概要 |
本研究では,「ソフトマター」の中でも,とくに,溶媒を含んだ網目系物質(永久網目をもつ化学ゲルおよび網目の組み換えが可能な紐状ミセル系両方)を主たる対象として研究を行った.また「非線型ダイナミクス」の中でも,とくに,ゲルの膨潤・収縮とそれに伴う応力・歪状態の変化を関連づける連続体的なゲルダイナミクスおよび相転移現象との類推によってき裂伸展を記述する変分型のフェーズフィールド破壊モデルを現象理解の概念的道具といて用いた. 本研究の大きな成果としては,フェーズフィールド破壊モデルの様々な系への拡張適用が挙げられる.本研究課題との関わりとして,田中および高石は粘弾性モデルへの拡張に貢献した.もう一つの重要な成果は,2成分溶媒におけるゲルダイナミクス理論(共役拡散方程式)を構築したことである(成果:Y. Tanaka et al., JCP in press).以前行ったゲルの破壊実験(Y. Tanaka et al., SoftMatter 2016)において,水を溶媒とするゲルの破壊強度は,き裂先端に別の良溶媒を注入すると増加することが見出された.上述のゲルダイナミクス理論により,この強度上昇の原因を合理的に理解することが可能になった. 実験面では,組み換え網目系(ひも状ミセルを形成するCTAB溶液をモデルシステムとして採用)に微粒子を分散させた混合系での定常せん断レオロジー(せん断速度vs. せん断応力の関係)および一軸伸長における挙動を実験的に詳細に調べた.分散した微粒子の体積分率の増大に伴い,CTAB溶液の著しい特徴である定常せん断流における応力の平坦部が消失することが実験的に発見された.これを説明するための確率モデルの構築に取り組んだ(成果発表:レオロジー討論会2018).
|