研究課題
本年度には、(1)カプセル内でのDNA高次構造変化の観察行い、(2)カプセル内でブラウン運動をするDNAの割合を増やす方法を検討続けていた。(1)本研究で構築したDNA@カプセルのモデルにおいて、長鎖DNAの一部がカプセル膜に固定している。そのため、イオン濃度の変化やカチオン性バインダーの付加により、カプセル内での大きなDNA構造変化が起こらず、DNAがカプセル膜の付近に集合することがわかった。個数の少ないカプセルの中でブラウン運動するDNAに対して4価カチオン(スペルミン)の影響を調べた。カプセルの溶液にスペルミンを加えると、カプセル内でのコイル状態のDNAがグロビュール状態へと折り畳むことが確認した。DNA折り畳み転移に伴い、ブラウン運動をしていたDNAが膜に吸着して固定された。これは、DNA高次構造に変化を及ぼすスペルミンは、同電荷のカプセル膜とDNAとの間に引力的相互作用を引き起こすからであると考えられる。(2)本研究の実験モデルを、長鎖DNAがカプセル膜に吸着しないように発展するため、高分子膜の構築方法の検討をしていた。低電荷のポリアクリル酸(PAA)とポリ(アリルアミン)(PAH)を用いて、異なったpHと塩濃度の条件でPAAとPAHの電離度および高分子膜の電気的性質をコントロールして、DNAのカプセル化を行った。調整の結果は、NaCl 1 mM、pH 6の条件下で構築したほとんどの3層のカプセルの中で多数のコイル状態のDNAがブラウン運動している状態を実現できた。しかし、これらの調整によってカプセル膜を構成する高分子の間の静電気的相互作用が弱まるため、カプセル膜の分解や複数のカプセルの凝集などの問題が生じた。また、低いpH値の溶液中にCaCO3ビーズ上で高分子膜を調製すると、ビーズが溶解し、カプセルが崩壊することもあった。以上のように、DNAとカプセル膜との間の相互作用を調整する際、カプセルの構築過程にも大きな影響があることが明らかになった。
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