水・油混合系のような混合溶媒における電解質高分子のコンフォメーションの変化、またそれが及ぼす電解質高分子溶液の物性の変化を、数値シミュレーション、理論解析を用いて調べた。温度、混合比を変え、混合溶液の相分離点に近づけると、電解質高分子の周りで、電解質高分子と親和性の高い成分の濃度が増加する。その濃度変化の雲が重なると、界面張力、(または臨界カシミール力)により、電解質高分子鎖のモノマー間に実効的な引力が生じ、コンフォメーション変化が起こることが、これまでの研究で分かっている。これを多数の高分子鎖を有する高分子溶液系に拡張し、混合溶媒中の高分子溶液の相分離現象について調べるというのが本研究の目的である。 これまでは溶媒を場として扱ってきたが、R1年度は、粗視化分子動力学シミュレーションを用いて研究を行った。高分子鎖はバネ・ビーズモデルを用いて記述し、混合溶媒は二種類の球状粒子から構成する。分子種としては3成分なので6つの相互作用パラメータ、高分子濃度、混合溶媒の組成比、温度、高分子の重合度といったパラメータを変え、それぞれの相挙動を調べた。系を粒子描像で記述することにより、それぞれの分子がどのように高分子と相互作用するか明らかになった。例えば、高分子と親和性の高い分子は高分子を過渡的に架橋する。特に、高分子溶液の相分離における初期過程を詳細に調べたところ、各々の高分子鎖が密なグロビュール状になりそれが凝縮していく過程と、他の高分子鎖と過渡的な架橋を作ることでゲル状になり相分離が進行していく場合があることが分かった。それらの違いは高分子の重合度、濃度に大きく依存する。 当初の予定より研究が首尾よく進み、微視的なモデルを用いた研究にも着手することができたが、電荷の影響については詳しく調べることができなかった。今後、取り組んできいきたい。
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