研究課題/領域番号 |
17K05620
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森下 徹也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10392672)
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研究分担者 |
米澤 康滋 近畿大学, 先端技術総合研究所, 教授 (40248753)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自由エネルギー計算 / レアイベント / 位相空間 / 生体分子 / 分子動力学 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、本課題代表者が7月から経済産業省に出向することになり、それ以降の研究活動が実施できなくなった。また、コロナパンデミックによる学会の相次ぐ中止や非常事態宣言による自宅待機を余儀なくされたこともあり、分担者の研究活動にも支障が生じたため、本事業の延長措置申請を行い、令和2年度事業を令和3年度に実施することとなった。 令和元年度に関しては、一般的かつ普遍的な量といえるポテンシャルエネルギーをCVとして採用した加速ダイナミクス手法を考案し、protein-Gの粗視化モデルや不純物を含むアモルファスシリコンの系に適用してその有効性を確認した。 考案した手法では、従来のポテンシャルエネルギーにバイアスポテンシャルを加えることで、障壁を効率的に低くすることができる。また、一定のエネルギー値以下の領域だけにバイアスを付加することで、人工的にイベントを加速してもその現象の時間スケールを正しく評価できることを示した。この手法はハニルトニアンのポアンカレ変換を基に考案されたため、ポアンカレ加速ダイナミクスと呼ぶ。 粗視化モデルのprotein-Gに対してこの手法を適用し、末端間の残基同士のポテンシャル相互作用エネルギーにバイアスポテンシャルを付加し、分子形状が広がったコンフォメーションを高頻度にサンプルすることに成功した。これにより、エネルギー障壁の存在により“レア・イベント”となっている現象も、ポアンカレ加速ダイナミクスにより“通常のイベント”のように再現でき、さらにその時間スケールも正しく評価できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度事業は上述のように1年延期としたが、それまでの進捗はおおむね順調であった。平均力ダイナミクスの拡張であるLogPD法を考案し、さらに系の詳細に依らない普遍的なCV構築の一環として、SOMによる機械学習やエネルギーのCV化などを実施してきた。また、平均力ダイナミクスの代表的手法であるTAMDやLogMFDを実行できるプログラムコード開発・公開を実施した。令和3年度事業が順調に進めば、最終的な本事業の目的は達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に、令和2年度実施予定の研究活動を令和3年度に実施する。即ち、系の動的な変化を適切に記述できるCVの、一般的な構築法の開発を継続する。令和元年度ではポテンシャルエネルギーを一種のCVとして扱い、高いエネルギー状態を頻繁に実現できるようなバイアスポテンシャル関数を導入することで、限られた時間内に数多くのコンフォメーション変化を実現する手法を導入しその有効性を確認した。また、機械学習の一種である主成分解析に関する予備的な計算も実施した。令和3年度は、主成分解析をベースに一般化CVを構築するスキーム開発を推進する。 平成30年度の研究成果から、非線形な変数変換によるCVの構築は、必ずしも効率的とは限らないことがわかっている。主成分解析は線形変換であるため、CVの構築は比較的容易で一般的であり、物理的な理解もしやすい。一方で通常の生体分子系で用いられる主成分解析においては、原子座標を変換することで主成分を構築するが、その際には構造重なりを考慮する必要があるなどの問題点も指摘されている。そこで、従来あまり対象としてこなかった変数を変換対象とする新たな主成分解析スキームを構築する。 具体的には、各原子の位置座標だけではなく、ボンド角や二面角、あるいは特定の原子間距離なども主成分解析の対象変数とする。さらには配位数や分割したエネルギーなども対象にする。このような様々な量を対象とすると、構造揺らぎに協同的な寄与をする変数とそうでない変数が、主成分解析により自動的に分類されることが期待される。協同的なダイナミクスに寄与する変数が自動的に抽出されるということは、一般化CVを自動的に構築することを意味する。最終的には、このような協同的変数の動きを加速することで、相転移やコンフォメーション変化を加速するアルゴリズムの開発を目指す。これが成功すると、本事業の最終目標がほぼ達成できたことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が出向により1年近く研究業務に専念できなくなったことと、コロナパンデミックによりほとんどの学会が中止もしくはオンライン開催となり、予定していた旅費を使うことがなくなったため繰越金が発生した。事業を1年延長することになったため、令和3年度への繰越金を計算機使用料やデータ解析機器購入などに計上する予定である。
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