日本海の海水の量に関して、その季節変化を異なる三つのセンサーで捉えた。それらは海水の体積変化を計測するJASON等の衛星搭載海面高度計、海水の熱膨張の計算のもととなる海水温のプロファイルを計測するアルゴフロート、海水の質量変化を計測する重力衛星GRACEである。高度計のデータから熱膨張分を差し引くと質量変化となることから、三つの計測値がそのような関係を満たしていることをSea level budgetが閉じると言う。本研究では三つのセンサーから日本海の海水量の季節変化のSea level budgetが閉じることを確認した。その季節変化は5-7月に最小となりpeak-to-peakの振幅は10 cm程度である。 また日本海の海水質量の季節変化が地表荷重変化としてもたらす東北日本の季節的地殻上下変動を、全球航法衛星システム(GNSS)データから調べ、日本海の質量変化の影響が支配的な海岸部のGNSS局と、積雪荷重の影響が支配的な内陸部のGNSS局で振る舞いが異なることを見出した。なお日本海の海洋質量の季節変化は日本海と外部をつなぐ対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡における海水流量の季節変化のわずかなアンバランスに起因する。 最後に日本海東部における海水質量の季節変化と日本海東縁で発生する地震の季節性の関わりを調べた。その結果この地域の地震発生は5-7月に集中しており、その時期が日本海の海水質量が極小を見せる時期と一致していることを見出した。また日本海では半日周潮汐(M2分潮)の振幅が外洋に比べて有意に小さく、そのことが地震発生の季節性が顕著な要因の一つであることが示唆された。
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