今年度実施した内容は、(1)台湾南西部の褶曲発達に関する数値シミュレーション論文の再投稿準備、(2)台湾東部地震のInSAR・GNSS・水準測量データの統合解析、(3)SARデータの電離層擾乱の補正技術の改良、である。それぞれについて説明する。(1)は一度rejectされた論文に追加計算を行い再投稿するものである。主に泥の密度が周囲の岩石よりも軽い場合を足した場合のmud diapirの発達を計算し、物理的な理解を促進した。さらに数学的な定式化をより丁寧に記載した。5月頭には確実に再投稿できる。(2)については昨年度台湾東部で一連の内陸地震が発生したため、台湾の共同研究者からGNSSデータと水準測量データを提供して貰い、それらを良く説明する断層モデルを構築した。水準測量データは非常に精度が高いが周囲に内挿して用いるには地殻変動の波長が短すぎるという問題が発生した。そこで、(3)電離層擾乱の除去手法を高精度化する、ことに注力した。これについて以下にやや詳しく記載する。 台湾において非地震性の地殻変動を検出するには電離層擾乱の除去が決定的に重要である。その成否は電離層の状態やコヒーレンスなどに大きく左右され、解析手順にも大きく左右される。そこで悪条件下での補正方法を確立すべく、台湾・ネパールヒマラヤ・北アナトリア断層においてALOS-2が撮像したScanSAR(バンド幅14 MHz)とstrip-map (バンド幅28 MHz)双方のInSAR解析を行い、電離層擾乱を除去するノウハウを確立した。またこれまで用いてきたGomba et al. (2016)だけでなくWegmuller et al. (2018)によって提案された手法を積極的に取り入れ、アンラップエラーを低減させた。このノウハウについて学会で発表し、国際論文に執筆中である。
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