研究課題
2003年から2017年に中部日本下の太平洋スラブ内で発生した地震について,P波・S波を含む40秒の時間窓を用いて,波形の相似性が高い地震(相似地震)を抽出した.昨年度までに行ってきた解析領域を拡張することで,新たに3組の相似地震群を同定し,合計5つの相似地震群を解析に用いた.解析では,波形相関を用いた震源決定,スペクトル比法による応力降下量の推定,および地震波放射エネルギーの見積もりを行った.その結果,相似地震の震源は重ならないこと,つまりプレート境界等で報告されている繰り返し地震ではないことが確認できた.一方,各グループ内の震源は数キロ程度離れているが,いずれの地震も震源メカニズム解から期待される1つの面上で発生していることから,1枚の既存の断層面上に存在する異なるパッチが時間差ですべることで波形の類似性の高い地震が発生したと推測される.それらの地震は数日から数ヶ月の時間差をおいて発生している場合が多い.また,応力降下量は各グループでほぼ同じであるにもかかわらず,地震波放射エネルギーは一桁程度異なる場合があることが明らかになった.これらの結果は,深発地震の発生位置は既存の断層面で規定されるが,地震の動的震源パラメータは各すべり域の局所的な不均質(粒径や断層の成熟度など)を反映している可能性が高いことを示している.また,東京湾北部の太平洋プレート上部境界付近で発生する地震について波形相関を用いた震源決定を行った.その結果,地震活動は3km程度の厚みをもって発生していること,一部の地震はスラブ内の高角な面で発生していることなどが明らかになった.
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Physics of the Earth and Planetary Interiors
巻: - ページ: -
10.1016/j.pepi.2021.106695
Nature Communications
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41467-020-19541-y