研究課題
本研究の目的は,地球物理学的観測から得られる地震波速度および電気伝導度から,地殻内の流体分布およびその動態を理解することである。この目的を実現するために,含水岩石の弾性波速度,電気伝導度,浸透率の同時測定システムを開発し,岩石のミクロな空隙構造とマクロな物性の関係を理解することを目指した。本研究で開発した実験システムは,岩石試料に封圧を加えるための圧力容器および間隙流体圧制御システム,弾性波速度測定システム,電気伝導度測定システム,浸透率測定システムから構成される。間隙流体圧制御システムは,Watanabe and Higuchi (2014)と同様の油圧―水圧伝達機構を採用している。この実験システムでは,試料両端の間隙流体圧を独立に制御できるようにしており,両端の圧力差の時間変化から浸透率を測定する。油圧―水圧伝達機構に摩擦の小さなフッ素ゴム系Oリングを使用することにより,理論上は10^-16~10^-20 m2の浸透率測定が可能になった。ただし,浸透率測定の性能評価はまだ十分とは言えない。含水岩石を用いた弾性波速度,電気伝導度,浸透率の同時測定を実現するためには,浸透率既知の試料を用いた検証がさらに必要である。封圧下での含水岩石の弾性波速度・電気伝導度同時測定,SEMによる空隙の微細構造観察により,クラックの開口の大きな部分が高圧での流体の連結を維持することを明らかにした。地殻内に存在するクラックにおいても,開口の大きな部分がチューブ状に連結しているはずである。このような空隙構造を考えれば,地殻で観測されている4~5桁にわたる電気伝導度変化と10%程度の地震波速度変化を同時に説明できる。地震波速度,電気伝導度からの流体量の推定には,このようなチューブ状モデルを想定すべきである(Watanabe et al., 2019)。
すべて 2019
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Earth, Planets and Space
巻: 71 ページ: -
https://doi.org/10.1186/s40623-019-1112-9