研究課題/領域番号 |
17K05632
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 浩 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (40422761)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 衝突 / 原始惑星系円盤 / デブリ円盤 |
研究実績の概要 |
ダストから惑星までの一貫した衝突成長を実現するために、1km程度の小さな天体から惑星までの衝突進化のシミュレーションコードを以下のように開発した。この程度の大きさの天体になると天体の内部空隙率は変化しないため固定した内部密度で計算を行える。一方、円盤内の乱流が原因でできる密度ムラからの重力接道により天体の軌道は乱される。この効果が1km程度の天体でも重要であるため、この効果をコードに取り込んだ。また、惑星形成には衝突破壊が重要である。天体の物質的な特徴や構造が重要な非常に小さな天体と自己重力が重要である100km以上の天体のそれぞれは比較的に破壊強度に対して良いモデルが作られていた。しかし、中間サイズの天体の破壊強度に対してはあまり検討がされてこなかった。そのため、2種類の天体構造に対しての破壊強度のモデルを構築し、それぞれについて数値実験が行えるようにコードに組み込んだ。 まず、上記の開発したコードについて数値実験を行った。木星や土星のような巨大ガス惑星を形成のためには、臨界固体核質量を超える固体核形成が必要であるが、その形成条件を開発したコードを用いたシミュレーションにより条件を明確にした。その結果をもとに論文執筆中である。 上記のコードではまだ天体の密度は固定しているが、1m以下の小さな天体では密度が衝突などの過程により変化し、それが衝突成長を考える上で非常に重要な効果であることが過去の研究からわかっている。そのため、上記のコードと独立して天体の密度を変更できるコードを開発し、正確な計算ができるようになってきている。来年度に後者のコードの結果が得られるようになるだろう。それにより惑星形成の前半の衝突成長が得られ、それを初期条件として前者のコードにより惑星形成後半を調べれば、まずは別々なコードでダストから惑星までの一貫した惑星形成が可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、(a)「ダストから微惑星形成」と(b)「微惑星から岩石惑星またはガス惑星の固体核形成」の2つのステージを一貫した数値計算を行うための計算コード開発を行うことであった。今年度は、(b)のステージのコードを(a)でも適用できるように開発を行ったが、当初予定していなかった中間サイズの天体での衝突モデル構築も必要になったためそれも行いコードに組み込んだ。このコードではまだステージ(a)を完全に取り扱うことはできないが、主にステージ(a)を取り扱うコードを独立に扱うコードを作成し、それを拡張してステージ(b)の前半の計算を行えるようになってきている。 2つのコードを駆使すれば、一貫した惑星形成が可能になるため、おおむね順調に研究は進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した2つのコードを拡張する。まず、惑星形成前半(ステージa)の取り扱いを主に行っていたコードで1kmサイズの天体の形成までのシミュレーションを行う。その結果を初期条件として、惑星形成後半(ステージb)を取り扱うコードを用いて計算を行い。一貫した惑星形成の結果を得る。これにより近年議論されることが多くなった小石集積を世界で初めて広いサイズ分布を扱うシミュレーションにおいて検証することができるようになる。 また、ステージaのコードを拡張するときに得た知見を用いて、ステージbのコードをさらに拡張し、両ステージを一貫して計算できるコード開発にも取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーションの結果を保存するRAID-HDDを購入して保存を予定していたが、今年度は数値計算コード開発を順調に進めていたため保存用のHDDが必要なほどの計算は行わなかった。しかし、来年度は必要になるため、来年度に購入する予定である。
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