月のマグマオーシャンの固化とその後に起こったマントルの再溶融に至る,月初期の熱進化については未だに解明されていない.本研究は近年発見された,太古 の時代のマグマ貫入の痕跡と考えられる線状の重力異常(LGA)に着目し,貫入岩路頭の探索とマグマ組成の調査から,月の冥王代とも言える時代の火成活動の 復元を目指すものである. 昨年度は,これまでに選定した解析候補領域全ての詳細解析を終えた.特にLGA20の領域では太古のマグマ貫入の後に形成されたとクレーターによって掘り返されたと考えられる貫入岩の露出地域が発見された.それらの貫入岩露頭候補領域は高いFeO量を示し,玄武岩に近い反射スペクトルを示している.それらの貫入岩を掘り起こしたクレータのサイズを考えると,貫入岩の上面の深さは数km以下であることが示唆される.また,海のマグマ活動の時代に噴出した玄武岩と比較してチタン含有量とその多様性が低いことから,月のマグマオーシャン固化後の特定の深さの層を起源とするマグマである可能性が示唆された.
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