研究課題
氷天体における地下海の誕生から現在までの進化を説明するために,初年度までに構築した数値モデルを用い,前年度までに行った冥王星に対する数値実験をまとめて査読付き欧文誌に出版した.具体的には,質量と平均密度の制約下で許容される範囲で岩石とH2Oの質量比を変化させた内部構造(内部の岩石核と外層のH2O殻)をモデル化し,初期のH2O殻を全溶融と全固化の2極端状態を想定した(この初期状態は,冥王星集積時に獲得するエネルギーの違いを模している).岩石核には,熱源としての長寿命放射性同位体をCIコンドライト的な濃集度と普通コンドライト的な濃集度を仮定し,以後46億年間の内部温度分布の進化と地下海の生成・消滅を含めた厚さの変化を追跡した.岩石核は,その密度が高いほど核半径が小さくなる.特に岩石密度が3.5g/cc以上の場合には,H2O殻の下部で高圧相氷が出現する圧力範囲に達する.H2O殻はそれが固体である場合の粘性率が熱輸送を強く律速するため,5桁ほどの幅を持ったパラメタスタディを行った.全体的な傾向として,核が大きいほど地下海の存在期間は短いことや,氷殻の粘性率が海の存在期間に強く影響すること,そして現在の地下海の有無や厚さは初期状態に依存しないことが分かった.具体的に,現在の冥王星が地下海を持つためには,氷の融点粘性率が1x10^15 Pas以上でなくてはならない(半径860kmの核がCIコンドライト的な熱源濃集度を持つ場合).さらに,初期に1質量%のアンモニアが存在する場合は,地下海の存在期間が10億年以上延びることも分かった.以上のモデル計算と結果は,高圧氷も含めた氷天体の一般的な内部構造に適用可能であり,汎用性のある進化モデルを構築することができた.また,本研究を含めた議論の場として「衛星系形成研究会」を前年までと同様に継続開催した.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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