研究実績の概要 |
本研究期間前から行っているFe-(Si, S, C, H)系の第一原理分子動力学計算(核の温度・圧力領域(温度:4000ー8000K、圧力:100ー350 GPa))を行った。各軽元素のモル比が、0.1-0.3程度の範囲で、モル比 0.1ごとに組成を変えて、20 程度の異なる温度・体積条件で計算を実行した。その結果をもとに、組成の異なる各鉄液体混合物の状態方程式を作成した。同時に、自己拡散率の組成・圧力・温度依存性を明らかにした。 各鉄液体混合物の状態方程式と地震波観測値の比較により、外核全体の組成の推定を試みた結果、炭素が外核の主要な軽元素である可能性が低いことが明らかになった。しかしながら、他の軽元素のうち、どれが外核へ多く含まれるのかについてを、外核全体の地震波速度と物性の比較のみから結論することは不可能であることがわかった。一方、本研究より少ない組成・温度・圧力条件下で、本研究と同様の解析を行った先行研究では、外核は酸素に枯渇している(Huang et al., 2011の衝撃圧縮実験)、外核は酸素に富んでいる(Badro et al., 2014の第一原理分子動力学計算)とそれぞれで矛盾した結論を得ている。我々が構築した状態方程式を用いた場合の結果とは対照的である。さらに他の制約条件(全地球組成,ICBでの密度不連続性,P波速度の不均一性,核形成時の元素分配)を考慮して、外核の軽元素組成を制約した。 マグマオーシャンでの金属の分離過程を取り扱う数値モテル(流体力学に基ついた動径方向1-Dコード)に各元素の移流を組み込み、分離直後の金属とケイ酸塩メルトにおける各元素の濃度の計算を可能にした。
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