研究実績の概要 |
本研究は、水星の地殻形成史に迫るために米国の水星探査機「MESSENGER」により取得されたデータを用いた水星全球の地質図を作成することを目的としている。 本研究では、MESSENGER-MDISで得られた可視・近赤外分光スペクトルデータを教師なし自動分類法の一つであるISODATA法を用いて、緯度65度以内の分光データを分類した。分類には源泉データより抽出した特徴量である反射率、連続部の傾きおよび吸収率(4バンド)を規格化したデータを用いた結果、水星の分光データは13クラスに分類された。 これら特徴量分類と元素濃度・クレータ密度・標高との比較、特徴量間での比較を行った。特徴量分類とクレータ密度および標高との比較から、水星の分光データは大きく2グループに分類された。グループ1(4クラス)は、比較的吸収が小さく形状の似たデータ群であり、クレータ密度が高く比較的ラフな水星表面に広く連続的に分布した。グループ2(9クラス)は、比較吸収が深く形状も異なるデータ群であり、クレータ密度が低く比較的スムースな水星表面に細かく分布した。元素分布との比較では、どの特徴量との間にも強い関係はなかった。一方、特徴量間の比較からは、反射率と傾きの間に良い相関が見られたが、吸収率が小さいため、吸収率との比較からは強い相関を見出すことはできなかった。 これらの結果と月での分類結果(Hareyama+, Icarus, 2019)との比較・検討から水星の表層進化について考察を行ったところ、1. グループ1の分光データ群は月の高地のように比較的初期に形成され表面に露出した均質組成の地殻であり、グループ2の分光データ群は月の海のように初期地殻形成後に表面に吹き出したマグマユニットであること、2. 水星全球にわたって宇宙風化が強く進んでいるが、形成後の風化過程は月とは異なる原因が示唆されること、が明らかになった。
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