研究課題/領域番号 |
17K05643
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
松本 晃治 国立天文台, RISE月惑星探査プロジェクト, 准教授 (30332167)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 月内部構造 / 月マントル組成 / 潮汐加熱 |
研究実績の概要 |
これまでに、マントルのある層について、組成と温度をパラメータとして密度と弾性率を計算する定式化を行い、測地観測と走時観測を用いて月内部構造の拘束を試みた。しかし、測地観測と走時観測のみを用いる限り、温度と組成の間にトレードオフが残り、構造を記述する各層のパラメータを十分に拘束できないことが分かった。そこで、月内部の温度構造を拘束するために、新たな地球物理観測として電磁誘導応答を追加する方策について検討を進めた。まず研究協力者の原田雄司氏が東京大学地震研究所の研究者の協力を得て計算手法・コードに関する情報を収集し、その後、原田氏を国立天文台に招へいし本研究へ適用する方策を議論した。現在、深さ方向の一次元電気伝導度プロファイルが与えられた場合に、表面で観測される見かけ抵抗の周波数依存性を計算するコードが整備されている。また、アポロ計画で行なわれた月の誘導磁場の観測から月内部の電気伝導度構造を推定した先行研究の結果を用いてフォワード計算し、観測値が再現されることを確認した。次に、ある層における鉱物組成と温度というパラメータからその層のバルクの電気伝導度を計算する必要があるため、単一鉱物について温度・圧力と電気伝導度との関係を調べた先行研究を調査し、バルク電気伝導度を算出する方法の検討を進めた。当初は電磁誘導応答も含めたフォワードモデリングまで進む予定であったが、「現在までの進捗状況」に述べる理由により達成するには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者は「はやぶさ2」に関与しており、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに滞在した期間(2018年6月~2019年11月)に日々ダウンリンクされたLIDAR測距データの一次処理、および測距データを用いた探査機軌道推定を主に担当した。この業務と関連論文の執筆に多くの時間を割かざるを得なかった。また、研究協力者の原田氏と研究打ち合わせを行うために2020年2月に澳門科技大学への訪問を予定していたが、中国における新型コロナウイルス感染症の拡大状況に鑑み、これをキャンセルした。以上の理由により、本研究の進捗に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
一年間の研究期間延長が認められたので、2020年度に電磁誘導応答を取り入れたインバージョンの完成を目指す。このためには研究協力者との協働が必要である。新型コロナウイルス感染症の拡大が収束せずface to faceの議論ができない場合は、オンライン会議システムを利用した協働を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」に記述した通り、主に研究代表者が「はやぶさ2」に割くべきエフォート率が著しく増大したという理由により、本研究の進捗に遅延が生じた。これを受けて一年間の研究期間延長を申請し認められたことに伴い、2020年度への繰り越しが生じた。新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないため不確定性が残るが、繰り越した助成金は主に研究協力者との協働と成果発表の為の旅費として使用することを計画している。
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