本研究は、分化小惑星の代表であるベスタの地質・内部構造に迫るため、全球地質図を作成することを目的としている。地質図は形成・進化史を読み解くために欠かせない。これまでは各種の観測データの研究者が確認・判読し作成されてきた。しかし、全球地質図のように対象面積が広大になると、複数の研究者で地域分割して判読し、その後統合する作業が必要となり、研究者間での判読基準揺れ等の問題で結合に際して困難が生じる場合も多かった。また近年の探査データの高解像度化・多波長化の流れもあり、研究者がデータを網羅的に確認し判読することは不可能である。そのため、米国航空宇宙局により実施 されたDawn探査機により得られた各種の探査データに対し、機械学習手法を用いた統合解析を適用し、ベスタの地質区分を決定し、さらに付加情報を加えベスタ 全球の地質図を作成するものである。機械学習手法を用いることで個々の研究者の経験に基づく判読揺れを排除し、また計算機リソースの許す限り多量の観測データを網羅的に用いることが出来る。 本研究では、基礎的な(地質)ユニット分類には、Dawnに搭載されたFraming Cameraによるマルチバンド分光データを用い、機械学習手法については複数手法を試行したが、混合ガウスモデルに変分ベイス法を組み合わせた変分混合ガウスモデル(VGMM)によるクラスタリングを最終的に採用した。なお、FCデータについては、VGMMにかける前に前処理として不適合データの排除と主成分分析を適用した。さらに、地形データ、Gamma Ray and Neutron Detectorにより推定された元素分布データを用い、さらにVesta起源隕石との対応から各ユニットの解釈を行い、上下関係及びVestaの内部構造についての推定を行った。 2022年度はユニットの解釈の見直しをすると共に、国際学会で最終結果の発表を行った。
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