研究課題/領域番号 |
17K05645
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
谷川 亘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (70435840)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 摩擦係数 / 透水係数 / 摩擦発熱 / 粘性率 |
研究実績の概要 |
巨大地震発生時に、断層の高速すべり運動により、断層物質は急速加熱による焼結作用に伴う空隙率の低下により透水性の低下が期待される。そこで、海洋研究開発機構高知コア研究所の回転式摩擦試験装置を改良し、断層すべり運動による透水性変動の定量的な評価および、すべり速度と透水性の変化量を評価した。この実験では蒸留水を間隙流体として用いて、試料内部と外部に一定の水圧差を与えて流体が常に模擬断層面を流れる環境で実験を実施した。透水係数は定差圧流量法により求めた。低い透水性の断層物質を模擬した花崗岩とドレライトを用いて摩擦実験を行った結果、いずれのすべり速度(0.1 mm.s~1 m/s)においても、すべり開始とともに断層物質の透水性が増加し、すべり終了後に透水性がゆるやかに減少する傾向が認められた。さらにすべり速度が大きくなるほど摩擦係数がより低下し、透水性がより増加することが明らかとなった。共焦点レーザー顕微鏡により実験前後の断層面の凹凸度と開口幅を評価した。その結果、測定した開口幅から推定した透水係数は実測値と一致が認められた。つまり、断層面の開口幅が透水性に大きな影響を与えていることが明らかとなった。以上の結果を踏まえると、摩擦発熱に伴う間隙水の熱膨張を起因とした間隙水圧の増加と粒子の体積膨張による開口幅の増加、粘性率の低下がすべりに伴う透水性の変動、およびすべり速度依存性に影響を与える原因であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
摩擦透水試験の開発に時間を要したため、研究の中核である摩擦溶融とその後の急冷に伴う急速強度回復実験を実施出来なかった。特に、高間隙水圧条件を保持しながら剪断変形を与えるための設計と部品の開発に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
山口大学の回転式摩擦試験装置を用いて、摩擦溶融しやすく、かつ熱クラッキングが発生しにくい試料を用いて実験を実施する。1m/s以上の速い速度で回転させてすべり面で溶融が発生した直後に急激に減速させる。数秒から数時間の間隔を空けた後、再度すべり実験を実施する。再度すべらせたときの強度の増加と時間間隔との関係を明らかにする。さらに、高知コア研究所の摩擦透水試験装置を用いて実験後試料を再度利用して、透水係数の測定を実施する。さらに実験前後の試料の化学分析・鉱物分析・微小構造解析を実施し、溶融にともなう化学的・構造的変化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
山口大学で予定していた摩擦実験が実施できず、次年度に変更して実施することにしたため未使用額が生じた。次年度は、山口大学で1ヶ月程度摩擦実験を実施する予定であり、それに関わる消耗品および旅費等に使用する。
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