研究課題
地震時の高速すべりにより、断層面は急速加熱による焼結作用伴い透水性の低下、もしくは間隙水圧増加による透水性の増加が期待される。そこで、海洋研究開発機構高知コア研究所の回転式摩擦試験装置を改良し、断層すべり運動よる透水性変化の定量変化とすべり速度との関係を評価した。昨年度までの実験結果から、すべり面の開口幅の変化量の測定精度の向上と高圧対応・低流量環境に対応できる流量計測が必要であることがわかった。そこで、試料の縦ひずみ量の測定するためにレーザー変位計を新たに取り付けた。その結果変位精度が数倍向上した。また、コンパクトコリオリ式マスフローメータ(Bronkhorst社)を新たに取り付けることで高圧高流量環境(間隙圧20MPa、流量0.02-1mL/min)を整備した。これまでに取得したデータについて試料の縦変位量と透水係数の変化量に着目して整理した。その結果、縦変位量の変化がすべり面の開口幅の変化を示していると仮定すると、透水係数の変化量は、Cubic law(開口幅の3乗が流量に比例する法則)を用いると開口幅の変化で説明できることがわかった。また、断層すべり時の開口幅の変化量(=増加量)はすべり速度の増加とともに増加する傾向が認められた(1m/sのすべり速度で2桁の開口幅の変増加)。これは摩擦発熱に伴う熱膨張量・間隙水圧の増加により開口幅が大きくなり、透水係数が増加することを示唆している。
3: やや遅れている
摩擦透水試験の開発に時間を要したため、研究の中核である摩擦溶融にともなう急速強度回復実験を実施出来なかった。また、山口大学の装置利用のスケジュール調整がうまくできなかった。
山口大学の回転式摩擦試験装置を用いて、摩擦溶融しやすく、かつ熱クラッキングを発生しにくい試料を用いて実験を実施する予定である。山口大学の装置では1m/s以上の速い速度で回転させてすべり面で溶融が発生した直後に急激に減速させる実験を試みる。数秒から数時間の間隔を空けた後、再度すべり実験を実施する。再度すべらせたときの強度の増加と時間間隔との関係を明らかにする。一方、高知コア研究所の回転式摩擦試験装置を用いても摩擦溶融実験を試みる。山口大学の装置と比較して高知コア研究所の装置は速い回転速度を出力できないため、より高い荷重を試料にかけることにより溶融現象の再現を試みる。実験後の試料は再度利用して、透水係数の測定を実施する。さらに実験前後の試料(間隙水を含めた)の化学分析・鉱物分析・微小構造解析を実施し、溶融にともなう化学的・構造的変化を評価する。
山口大学で摩擦実験の計画を立てていたがスケジュールが合わずに次年度に装置を利用することとなった。その実験のための旅費、消耗品等に使用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Marine and Petroleum Geology
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