本研究では黒潮続流などの東向ジェットによって形成される再循環と東西縞状ジェットについて研究を行った。再循環に関しては、境界条件として続流に対応する流入流出を与えた数値実験で得られた深層再循環の渦位収支を周波数に分けて解析し、深層再循環を駆動する南向きの渦位輸送がロスビー波に相当する80日周期の擾乱とその半分の40日周期の擾乱との非線型相互作用で生じることが示された。この様な擾乱は再循環によって西に移流される孤立渦の後ろに生じやすい。実際、東西周期境界条件を課した数値実験でこの様な孤立渦を与えても南向き渦位輸送が再現出来ることが示された。この過程では数値モデルで直接表現できないサブグリッドスケールへの渦位のカスケードは本質的でなく、Rhines and Young (1982)の渦位一様化説で述べられている渦位の不可逆的な混合は再循環の形成に重要でないことが示された。 東西縞状ジェットに関しては、前年度までの海洋大循環モデル(OGCM)を用いた数値実験と2層準地衡流モデルを用いた数値実験を比較した。2層準地衡流モデルでもOGCMと同様、東向ジェットの周辺に東西縞状ジェットが形成され、風によって形成されるスベルドラップ循環流と同じ方向に南北にゆっくりと移動した。しかしOGCMの場合では縞の移動速度はスベルドラップ循環が存在する表層の鉛直平均流速とほぼ一致したのに対し、2層準地衡流モデルでは上層の流速の0.4倍程度と小さくなることが示された。さらに層の数を3層に増やした3層準地衡流モデルでは、東西縞状ジェットが不明瞭になる傾向があるものの、OGCMの場合と同様、スベルドラップ循環とほぼ等しい速度で南北に移動した。これらの要因についてはOGCMと3層準地衡流モデルではLiu (1999)の示したadvectiveモードが存在することが考えられるが、今後さらに解析が必要である。
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