研究課題
令和元年度では,スカイラジオメーターを用いた雲推定アルゴリズムを多角的に検証し、誤差範囲をさらに明確にした上で,そのアルゴリズムを論文化した。透過率を用いたスカイラジオメーターによって推定される光学的厚さ(COD)が~5以下の場合,雲粒子の有効半径(CER)の推定に比較的大きな誤差が存在することが明らかになった。昨年度実施した衛星による雲観測の精度評価についての研究を今年も継続した。スカイラジオメーターによる日本の複数地点での地上雲観測のデータを基に,先述のアルゴリズムを用いて解析し、その結果の基にGCOMーC衛星搭載のSGLI、ひまわり8号搭載AHI、TERRAとAQUA衛星搭載のMODISセンサーの観測に基づく水雲と氷雲のCODとCERの推定精度の検証を実施した。その結果、光学的に薄い(厚い)雲の場合に水雲と氷雲両方に対する衛星観測のCODは、センサーの違いに関わらず、地上観測値より過大(過少)評価する傾向があることが明らかとなった。また,スカイラジオメーターを用いたCODの検証結果と日射量を用いた検証結果が一致することがさらに分かった。CERについては、衛星観測値が地上観測値と比べて過大であることが分かった。加えて、雲観測時刻から一番近い時刻の,スカイラジオメーター観測によるエアロゾルのデータを参照し、エアロゾルの光学的厚さとスカイラジオメーター観測のCER間の関係を調べた。その結果、比較的エアロゾルの濃度が高い都市大気におけるCERが海洋大気におけるCERより小さくなる傾向が示され、雲物理特性に対するエアロゾルの間接効果の研究において,スカイラジオメーターのデータの有用性が示唆された。
4: 遅れている
吸収性のエアロゾルが雲の下に支配的に存在する場合、地上観測による雲特性の推定および曇天におけるエアロゾルの光学的厚さの推定に大きな影響を及ぼすことがシミュレーションの解析より明らかになった。その問題は本研究が予定通り進捗しなかったことの主な理由である。その吸収性エアロゾルの影響を合理的に取り除くことは今後の大きな研究課題となっている。加えて、従来の研究計画においてスカイラジオメーターの2.2ミクロン波長の活用を想定していたが、実際の観測ではその波長における有効的な観測が限られたため従来のアルゴリスムの構造を見直す必要があった。上記のような理由に伴い本研究が遅れた。
これまで実施してきた衛星観測による雲特性の検証についての研究を今後も継続し、衛星の雲プロダクトの精度評価をより進めていく。加えて、雲の推定に影響を及ぼす雲の下における吸収性エアロゾルの影響を合理的に取り除く方法を開発する。現時点では、雲物理推定時のエアロゾルの情報として,雲の観測時刻から一番近い晴天時の同じスカイラジオメーターによるエアロゾルの情報を代用することを考えている 。
前年度学務の都合により,計画していた国際学会に出席できなかった。また、研究が予定通り進まず、論文の投稿も遅れた。上記の理由で,次年度使う額が生じた。本年度は、消耗品の購入、論文の投稿、可能な限り国内における学会・研究会で発表するため,昨年度生じた額を使う予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Remote Sensing of Environment
巻: 239 ページ: 111583
10.1016/j.rse.2019.111583
Atmospheric Measurement Techniques
巻: 12 ページ: 6037-6047
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SOLA
巻: 15 ページ: 198-204
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