研究実績の概要 |
大気擾乱や潮汐混合、海洋の中規模現象が海洋の物理環境変化を通じて、海盆スケールの物質循環・生態系に与える影響を理解するため、植物プランクトンの成長速度を固定した従来の低次生態系(NPZD)モデルと、研究協力者が中心に開発した最適な海洋環境(栄養塩や光)に適応した植物プランクトンの成長速度を表現できる低次生態系モデル(Flexible Phytoplankton Functional Type, FlexPFTモデル)を、海洋の中規模現象(渦や海洋循環など)が再現できる北太平洋渦解像モデル(OFES2)にそれぞれ組み込み、シミュレーションを実施した。モデルの駆動力として、気象庁が提供する55年長期再解析データ(The Japanese 55-year Reanalysis, JRA55)を使用した。 OFES2を用いて、2つの低次生態系モデル(NPZDモデルとFlexPFTモデル)のコーディングをそれぞれ行い、JRA55の3時間毎を駆動力として過去再現シミュレーションを実施した(1980-2019)。また、昨年度実施出来なかった大気擾乱の影響を調べるため、上記で実施した2ケースの低次生態系モデルシミュレーションに加えて、日平均大気外力を駆動力とした2つのケースを実施した(1980-2019)。 栄養塩と光環境に対する生物生産の応答が異なる2つの低次生態系モデルによる再現性の違いを北太平洋における2つの観測線(東経165度線と北緯35度線)においてそれぞれ確認した。両断面ともに栄養塩濃度に差異は見られなかった。一方、クロロフィル濃度と一次生産の分布に違いが見られた。光環境と栄養塩環境に応じて変化する生物生産の式を導入することで、この違いが明らかになり、より現実的な分布を再現することを確認できた。
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