研究課題/領域番号 |
17K05669
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
家森 俊彦 京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (40144315)
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研究分担者 |
齊藤 昭則 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10311739)
能勢 正仁 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (90333559)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | magnetic ripple / acoustic gravity wave / ionosphere / electron density / Swarm satellites |
研究実績の概要 |
・ESAからSwarm電子密度観測データを収集・処理し、蓄積すると共に、磁場データと比較した。ハイパスフィルターをかけると、電子密度データにも磁場の場合と同様に、小規模な波動状構造が頻繁に見られることがわかった。しかし、磁場変動(磁気リップル)と電子密度変動(電子密度波状構造)は、軌道に沿って観測される見かけの周期が異なり、振幅が極大となる場所も必ずしも一致しない。また、磁気リップルは電離層電気伝導度に比例して昼間側の振幅が大きいが、電子密度波状構造は夜間の方が振幅が大きい。 ・昨年度は、音波モードの大気波動が鉛直上方に伝搬、電離圏E層でダイナモ電流を流し、それが沿磁力線電流として衛星軌道まで流れ、磁気リップルとして観測されると共に、鉛直上方に伝搬した音波が衛星軌道の電離圏F層で電子密度擾乱を起こしていると解釈すると、衛星軌道上での磁場変動と電子密度変動の位置関係が矛盾なく説明できる例をいくつか見いだした。今年度は、この解釈が一般的に成り立つか否かを確認するため解析例を増やした。また、電子密度変動のグローバルな分布を求め、磁場変動のグローバル分布と比較した。その結果、一定の類似性が見られるが、かなり相違する領域もあることが判明した。 ・タイ・ピマーイで取得した微気圧、磁場、降雨およびGPS-TEC データから、スコール発生時の微気圧変動と電離圏TECおよび磁場変動の関連を前年度に引き続き調べた。 ・トカラ・中之島で行っていた微気圧計、磁力計、高時間分解能の雨量計による観測を6月まで継続したのち、機器を撤去した。2013年から開始した観測データは全て毎秒値ファイルの形でデータベース化した。2017年以降のGPS観測データ(15秒値)を入手した。 ・地上観測データを公開することに役立つと考えられる京都大学内のデータマネージメントシステム開発を目指す活動に参画した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Swarm衛星による磁場および電子密度データの取得を継続すると共に、微気圧変動や磁場、GPS-TECなどの地上観測データを蓄積することができた。 (2)電子密度データに、これまで報告されていない微細な波状構造がほぼ常時存在することを見いだした。 (3)Swarm電子密度データの統計的解析を行い、グローバルな分布およびそれらの季節依存性等を調べることにより、これまで行ってきた磁場変動のグローバル分布の特性と比較することができた。 (4)地上観測データを蓄積することにより、観測諸量の関連を調べることのできるイベント数を大幅に増やすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
・学会で発表を行った成果を論文として学術誌に公表することが遅れているので、それを最優先する。 ・自らが観測・取得した地上観測データについては、その整理と公開のためのデータベース化を行う。 ・地上観測データとSwarm衛星観測データの同時観測例を更に多く解析することにより、下層大気擾乱の磁気リップル現象および電子密度波状構造生成における役割と、現在推測しているそれらの生成メカニズム、すなわち、「大気音波モード重力波による電離層でのダイナモ効果と、波動の電離圏F層への伝搬」を更に確かなものとする。 ・下層大気擾乱の一つである積雲対流の強度の指標として有用と考えられるグローバルな降雨分布データが昨年度から公開されたので、それも解析に利用することにより、磁気リップル現象および電子密度波状構造のグローバル分布の成因の理解を深める。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿中の論文の受理が想定より遅れて、R1年度に当科研費で支払いを予定していた論文投稿料の手続きが間に合わなかった。次年度使用額は、投稿料および研究継続に必要となる消耗品の購入に充てる。
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