研究課題/領域番号 |
17K05673
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
銭谷 誠司 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (10623952)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁気リコネクション / プラズマ粒子シミュレーション / マグネトポーズ / 非対称リコネクション |
研究実績の概要 |
磁気圏プラズマと太陽風プラズマが接する地球磁気圏昼側境界を念頭に、性質が異なるプラズマ境界で起きる「非対称」磁気リコネクションの詳細な性質を、2次元プラズマ粒子シミュレーション(PIC シミュレーション)を用いて調査した。そして、シミュレーションの電子のデータセットを徹底活用して、次の3つの成果を得た。(1)磁力線がつなぎ変わるX型領域の近傍では、電子の速度分布関数に「三日月」型の成分が現れることが先行研究でわかっていた。我々は、電子の軌道を解析して先行研究を裏付けたうえ、三日月成分に関する理論式を求めた。(2)X型領域の近くの別の領域で、電子の電磁流体的なバランス条件を評価した。その領域内で個々の電子の軌道パラメーターを評価して、粒子がジャイロ回転ではなくカオス的(非断熱的)運動をすることが、バランス条件に影響を与えていることを明らかにした。(3)電子の混じり具合を示す「有限時間混合率(Finite-Time Mixing Fraction)」という指標を考案し、X型領域の近傍で強い電子の混合が起きていることを示した。 また、シミュレーションデータを表示・解析するWebインターフェイスを開発して、遠隔地の共同研究者との議論に活用するとともに、一部のデータを「Magnetopause Reconnection Analyzer」という名称で一般に公開した。 さらに、高エネルギー天体環境で期待される相対論的磁気リコネクションのPICシミュレーションを実行し、PICのデータセットをエネルギー・運動量テンソルという形で利用して、X型領域付近の運動論的性質を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、2017年度に(1)対称リコネクション系で新しい解析手法を開発して、2018年度に(2)非対称リコネクション系に応用する予定であった。世界の研究動向を踏まえて、先に(2)非対称系の研究に取り組んだが、実際には(2)のデータ解析過程で(1)で構想した手法を開発・応用することに成功した。それに加えて、予定外の相対論磁気リコネクション問題においても成果が出た。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発した解析手法を、リコネクションの基本形である「対称」リコネクション問題に応用して、手法の基本的な性質を検証する。また、研究の過程で輪郭が見えてきた電子混合とエントロピーの関係を整理したうえで、PICシミュレーション結果の解析に応用する予定である。
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