研究課題/領域番号 |
17K05674
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高嶋 礼詩 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (00374207)
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研究分担者 |
西 弘嗣 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (20192685)
黒田 潤一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (10435836)
佐藤 隆文 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (30643332)
折橋 裕二 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70313046)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | K/Pg境界 / 白亜紀 / 古第三紀 / 北海道 / 年代モデル |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年,北海道白糠丘陵・川流布川で採集した泥岩試料から引き続き植物片の抽出を行い,植物片の炭素同位体比層序を作成した.さらに,2018年10月22日から10日間,ネパール・トリブバン大学のBabu Ram Gyawali博士を東北大学総合学術博物館に招聘し,同セクションの石灰質ナンノ化石層序の検討も行った.その結果,全層厚200mのセクションのうち,基底から80m上位の層準から,白亜紀を特徴づける石灰質ナンノ化石Biscutum sp., Watznaueria barnesiaeなどを見つけることができた.今年度得られた石灰質ナンノ石層序・炭素同位体比層序と,昨年実施した浮遊性有孔虫化石層序を組み合わせた結果,基底より90~110mの区間にみられる炭素同位体比層序の大きな負のシフトが,K/Pg境界である可能性が高くなった.さらに,K/Pg境界直下の厚さ4㎝の珪長質凝灰岩(基底より85m上位の層準)からはジルコンが大量に産出したため,ジルコンのU-Pb年代測定を実施することが可能である.また,K/Pg境界付近の古環境変動を解析するために,粘土鉱物組成とイライトの結晶化度の検討も実施した.これらについてはまだ全試料の1/6程度しか測定できていないが,現時点では本セクションにおいて乾燥・湿潤のサイクルが存在していたことが見出された.微化石・同位体比統合層序と凝灰岩の放射年代に加えて,サイクロストラティグラフィーによる高精度年代モデルを作成するために,泥岩の元素分析用粉末を全試料に対して作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査はすでに終了しており,約200試料の泥岩試料,7試料の凝灰岩試料の採集を終えている.これらの試料に対して,浮遊性有孔虫・石灰質ナンノ化石層序,炭素同位体比層序の作成についてはおおむね順調に進み,来年度前半にはすべてのデータが出そろう予定である.一方,凝灰岩の放射年代については,保存良好なサニディンを得ることができず,ウィスコンシン大学で実施する予定だった39Ar/40Ar放射年代分析ができないが,U-Pb放射年代測定に十分な量のジルコンを抽出することができ,現在, Arizona大学に送付してU-Pb年代測定分析を依頼中である.このように,K/Pg境界の層準の特定と年代決定についてはほぼ終了のめどが立った.また,並行して進めている古環境解析については,粘土鉱物組成とイライトの結晶化度について30試料の分析が終了し,底生有孔虫化石の拾い出し作業もすでに50試料が終わっている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究でK/Pg境界の詳細な層準の特定がほぼ見通しが立ったことから,最終年度は北海道・白糠セクション(当時のアジア大陸東縁の北西太平洋域)における白亜紀末~古第三紀初頭の古環境変動の解析を行うことに注力する予定である.まず期間の前半は,当時の乾燥・湿潤変動の解析を目的として,泥岩の粘土鉱物組成とイライトの結晶化度の測定を引き続き実施する.また,東北大学工学部合同分析班に設置のICP-MSを用いて各種無機元素の測定を実施し,海洋の酸化還元状態の復元(Mn, V, Ce, Mo),隕石由来物質の検出(Ir),化学風化強度の変遷(Rb, Sr, Al)などを解析し,これらの各元素の増減を周期解析する.この結果を基にサイクロストラティグラフィーによる年代モデルの構築も放射年代と同時に樹立する予定である.これらの結果を統合することにより,K/Pg境界の詳細な年代モデルの樹立と,古環境変動の復元を行うことが可能である.
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次年度使用額が生じた理由 |
分析を実施する予定が,機械の不具合により延期されたため.
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