研究課題
本研究では,福島県の猪苗代湖において湖内を面的にカバーする17地点(水深60m以深・2kmメッシュ)から湖底堆積物を採取し,1)地質学的・堆積学的検討から1888年磐梯山噴火に伴う密度流堆積物や2011年東北地方太平洋沖地震による混濁流堆積物などのイベント層を識別すること,2)採取した湖底堆積物コアの放射性セシウム濃度を測定し,2011年以降とそれ以前(大気圏内核実験)の放射性セシウム濃度のプロファイルを地層中に復元すること,これら1)と2)の結果を統合的に解析し,猪苗代湖における放射性物質の動態把握や放射性セシウム濃度の変化の将来予測を行うことを目的としている.2019年度までに,HR型不攪乱柱状採泥器を用いて合計25地点において柱状試料を採取した.半割した柱状試料の層相観察から,10地点において1888年イベント層を,15地点において2011年イベント層を識別した.放射性セシウム濃度の測定を本年度も継続して実施し,17本の柱状試料から大気圏内核実験の137Cs濃度プロファイルが得られ,14本の柱状試料から2011年福島第一原子力発電所事故による134Cs・137Cs 濃度プロファイルが得られた.放射能濃度は2011年3月15日時点に壊変補正を行い,インベントリーの計算を行った.大気圏内核実験の137Csインベントリーは1100-3000(Bq/m2)の範囲にあり,日本に降下した大気圏内核実験のインベントリーの値とほぼ一致した.福島第一原子力発電所事故による134Cs・137Csのインベントリーは33,000-93,000(Bq/m2)の範囲にあり,猪苗代湖に降下したとされる値(30,000 Bq/m2)よりも大きいことが明らかになった.このことは湖外から放射性物質が猪苗代湖に流入し,湖底堆積物として付加されたと考えられる.
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Sedimentology
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https://doi.org/10.1111/sed.12629
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