研究課題
(1)ベンガルファンから得られた海底コアから重鉱物を取り出し,その鉱物構成と化学組成を検討した.その結果,以下のことが明らかとなった.①中新世前期において,ベンガル深海扇状地の供給源となる地質体には,藍晶石や珪線石,十字石を含む高度変成岩が露出していた.②砕屑性ざくろ石の化学組成から,中新世前期においてはヒマラヤ山脈の中核部である高ヒマラヤからの供給が卓越していた.しかし,中期中新世では,それらの供給は相対的に減少し,低ヒマラヤやトランスヒマラヤからの供給が増加した.中新世後期から鮮新世においては,再び高ヒマラヤからの供給が増加し,現在と同様の状況となった.(2) ネパールヒマラヤにおける河川から砂試料を採取し,重鉱物分析を行った.これによって,ヒマラヤ山脈に分布する様々な地質体が生産する砕屑物の標準的鉱物構成を明らかにできた.その特徴は以下のようにまとめられる.①テチスヒマラヤ地域では,電気石・シルコン・ルチル等を主成分とする重鉱物を産する.②高ヒマラヤ地域では,角閃石・ざくろ石を主成分とし,珪線石・藍閃石・十字石などを含む重鉱物を産する.③低ヒマラヤ地域では,雲母鉱物がもっとも卓越するものの,角閃石やルチル,電気石を主体とする重鉱物を産する.(3)ネパールヒマラヤを流れる河川砂の検討結果と,ベンガルファン堆積物の時間的変化を比べると,以下の事柄が推測される.①中新世前期においては,高ヒマラヤ地域からの供給が卓越していたと言える.②中新世中期では依然として高ヒマラヤからの供給が卓越していたが,約12 Maから9 Maにかけて,低ヒマラヤ・テチスヒマラヤ地域からの供給が増加し,高ヒマラヤ地域からの砕屑物の寄与は低下した.③中新世後期から鮮新世にかけては,再び高ヒマラヤからの供給が増加し,現在と同様の鉱物構成となった.
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