本研究は、本来は令和3年度で終わる研究計画であったが、コロナ禍で学会や野外調査等の出張ができなくなり、不本意にも予定期間を延長したもので、本年度が最終年度に当たる。本年度は、野外調査が可能となり、奈良県の領家変成帯に調査・サンプリングに出かけることができた。広域変成岩のサンプル(泥質片岩、メタチャート)を採集し、また広域変成岩に花崗岩が貫入して形成された接触変成岩(泥質変成岩、メタチャート)も採集できた。それらのサンプル中に含まれる白雲母と黒雲母の結晶軸のプリファードオリエンテーションの計測をエックス線ゴニオメーターを利用して試みた。 本研究全体としては、(1)鉱物のプリファードオリエンテーションの形成に関するカイネティックモデルを構築することができ、その結果を実際のサンプルに当てはめる試みを開始できた。(2)ギリシャのシロス島で採集した大理石中で、マイクロブーディン構造を呈する角閃石粒子の破断面を観察することができた。破断面は一部が形成後に溶解した形状をしていた。(3)四国中央部の芋野岩体のカンラン岩中のオリビン結晶中に形成されたスピネルのマイクロブーディン構造を観察した。破断面は形成後に溶解が起こっており、破壊面は保存されていなかった。(4)北海道神居古潭変成帯中のメタチャート中のマイクロブーディン構造を呈する角閃石の破断面をFIB-SEМで観察した。破断面上に新たな角閃石が成長しており、直接破断面を観察することはできなかった。(2)~(4)の結果、直接地下深部で形成された破断面は保存されていなかったことがわかった。ターゲットとしたマイクロブーディン構造は形成された後でも高温高圧状態にあり、破断面で結晶成長や溶解が起こるような状態にさらされていたことがわかった。
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