研究課題/領域番号 |
17K05680
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
星 博幸 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (90293737)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地質学 / テクトニクス / 島弧衝突 / 回転運動 / 古地磁気 / 岩石磁気 / 中央構造線 |
研究実績の概要 |
本州中部における地質帯状構造のハの字型屈曲形成を理解するために,本研究は屈曲の頂部(cusp)付近に焦点を当てて17-16 Maの古地磁気方位を決定することを目標にしている。本年度も昨年度に引き続き,研究計画に沿って長野県中部における地質調査を実施し,屈曲周辺の地質と古地磁気の調査も合わせて実施した。 長野県中部の高遠地域の古地磁気方位を明らかにするために,昨年度に引き続き地質踏査と古地磁気サンプリングを行った。地質調査によって火成岩岩脈(主にドレライト)の分布が判明した。本地域で確認した20枚以上のドレライト平行岩脈群について「新しい岩脈法」(Yamaji and Sato, 2011)を適用した結果,NW方向でほぼ水平な最小圧縮主応力軸を持つ正断層型の古応力場が復元された。岩石磁気実験の結果,ドレライトの残留磁化を担う強磁性鉱物は主に磁鉄鉱と磁硫鉄鉱であることが判明した。交流消磁と熱消磁によって分離された特徴的な残留磁化の方位はすべて逆極性で,SSE偏角を持つ。アジア大陸の前期~中期中新世古地磁気方位と比較すると,ドレライト形成後に本地域ではアジア大陸に対して30°程度の反時計回り地殻回転運動が起こった可能性が出てきた。 高遠地域の北方に分布する中期中新世守屋火山岩類の古地磁気測定にも着手した。予察的なサンプリングと測定の結果,残留磁化は主に磁鉄鉱によって担われており,その方位は比較的大きな分散を示すようである。残留磁化には正極性と逆極性の両方があるようである。 研究成果の一部を日本地球惑星科学連合大会,日本地質学会学術大会,米国地球物理学連合秋季大会(AGU)などで発表した。また,いくつかの査読付き論文も発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画書に記載した長野県高遠地域および守屋地域の地質調査と古地磁気測定を予定通り実施できた(ただし守屋火山岩類は予察的調査)。平行岩脈群の古応力解析も予定通り実施した。2019年度は守屋火山岩類の古地磁気方位を明らかにし,高遠地域のデータと比較することによって約17 Ma以降の回転運動を定量的に求めることができる見込みである。高知大学海洋コア総合研究センターの研究設備は予定どおり利用できた。 実験室のPCおよびPCと測定装置を接続するパーツを更新した。 いくつかの成果を日本地球惑星科学連合大会,日本地質学会学術大会,米国地球物理学連合秋季大会などで発表した。また,本課題に関連するテーマのリビュー論文を2編,原著論文を1編発表した(いずれも査読論文)。 これらの達成度を総合すると,現時点ではおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展していると判断できるため,2019年度も研究計画に沿って地質調査と古地磁気測定を進め,データの取りまとめと公表作業も進める予定である。 2019年度は守屋地域の磁気測定を本格的に進め,中期中新世溶岩類の古地磁気方位を明らかにする予定である。結果次第では放射年代測定も必要になるかもしれない。岩石磁気実験も実施し,古地磁気を記録する強磁性鉱物の種類や磁気的性質も明らかにする予定である。 また,研究計画に沿って,2019年度には長野県中部の横河川地域の地質と古地磁気の調査も行う。先行研究の著者から得た情報によると岩石の変質が激しく,また露出もあまり良くないようなので,地質調査の結果次第では古地磁気調査を守屋地域に集中させる可能性も考慮している。 研究成果の公表作業(学会発表と論文発表)も引き続き積極的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度には守屋地域において放射年代測定を実施する可能性があり(地質調査と古地磁気測定の結果を踏まえて判断する),その費用が必要になる可能性がある。また,野外調査の回数も当初予定より若干多くなると見込まれ,その分の旅費も必要である。それらに充てたいと考えている。
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