研究課題
本州中部における地質帯状構造のハの字型屈曲形成を理解するために,本研究は屈曲の頂部(cusp)付近に焦点を当てて前期~中期中新世の古地磁気方位を決定することを目標にしている。本年度も昨年度に引き続き,研究計画に沿って長野県中部における地質調査を実施し,屈曲周辺の地質と古地磁気の調査も合わせて実施した。長野県中部の高遠地域及び守屋山地域の古地磁気方位を明らかにするために,地質踏査と古地磁気サンプリングを行った。高遠地域の地質と古地磁気については昨年度の結果を補強する目的で追加調査を行った。一方,守屋山地域で地質調査を行った結果,高遠地域に分布するドレライト岩脈と同様の岩相の岩脈が守屋山地域にも見られ,それらが守屋山の火砕岩層に貫入していることが確認された。また,守屋山地域から溶岩と火砕岩を採取し,その残留磁化測定を実施したところ,高遠地域のドレライト岩脈群とほぼ同じ残留磁化方位を有していることが判明した。本研究の着手前には,高遠地域のドレライトの方が守屋山地域の火山岩類よりも古く,残留磁化方位も両地域の間で異なると予想していたが,その予想と異なる非常に興味深い結果が得られつつある。守屋山地域の火山岩類からは年代データが未報告だが,その年代を解明しないと回転運動の考察が難しいことから,急遽,守屋山地域の放射年代測定を行う必要が生じた。放射年代測定は2019年度中には困難であったため,研究計画を延長し,2020年度にその測定を実施することにした。研究成果の一部を日本地球惑星科学連合大会及び日本地質学会学術大会で発表した。また,いくつかの査読付き論文も発表した。
3: やや遅れている
実施計画書に記載した長野県高遠地域及び守屋地域の地質調査と古地磁気測定はほぼ予定通り実施できたが,上述のように守屋山地域の火山岩類の放射年代データが必要になった。この年代データがないと残留磁化方位の解釈が困難で本研究の目的を達成できないため,急遽研究を延長し,2020年度に年代測定を実施することにした。また,本年度末に新型コロナウイルス感染症が拡大した影響で,高知大学海洋コア総合研究センターで予定していた測定の一部を実施できなかった。高知大学海洋コア総合研究センターの研究設備は概ね利用できたが,上述のように磁気測定を予定通り終了させることはできなかった。残った分の測定は2020年度に実施予定である。いくつかの成果を日本地球惑星科学連合大会及び日本地質学会学術大会で発表した。また,本課題に関連するテーマの原著論文を発表した。これらの達成度を総合すると,現時点ではやや遅れていると判断できる。
最終年度の2020年度は,残っている残留磁化測定を終了させ,守屋山地域の溶岩の放射年代測定を実施する予定である。そして,データの取りまとめと公表作業を進める予定である。守屋山地域の磁気測定では,残留磁化方位は概ね判明したが,それを担っている磁性鉱物の推定が不十分である。そのため,溶岩の岩石磁気実験も行い,古地磁気を記録する強磁性鉱物の種類や磁気的性質も明らかにする予定である。しかし,新型コロナウイルス感染症の拡大が進むと,これらの研究計画に沿った測定等を実施できない可能性がある。現在(2020年4月中旬),高知大学海洋コア総合研究センターを利用できない状況である。年代測定は研究予算の都合から米国の研究機関に依頼したいと考えているが,そこも現在はほとんど業務ができない状況のようである。できる範囲で成果を取りまとめることになると予想している。研究成果の公表作業(学会発表と論文発表)も引き続き積極的に進め,最終的に成果報告書を完成させる。
当初研究計画に沿って磁気測定を進めた結果,当初の予想外の地質学的・古地磁気学的データが得られた。それらのデータを解釈するには岩石の放射年代測定を実施する必要があり,それを次年度に実施することにした。その測定費用にあてる予定である。そのため研究計画を延長した。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
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