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2017 年度 実施状況報告書

阿蘇-5マグマ溜まり準備過程の物質科学的探求

研究課題

研究課題/領域番号 17K05682
研究機関熊本大学

研究代表者

長谷中 利昭  熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (50202429)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードカルデラ噴火 / マグマ供給系 / 阿蘇カルデラ / 大峰火山 / メルト包有物 / Aso-A, B, C, D / 噴火準備過程
研究実績の概要

阿蘇4火砕噴火の直前に噴火した大峰火砕丘(2 km3)について,大規模噴火の準備過程の情報を得るために,スコリア試料に含まれる斜長石,輝石斑晶中のメルト包有物の分析を行い,阿蘇4,小谷(おやつ)サブユニットの軽石のメルト包有物と比較した。全岩組成で,両者の間にわずかな違いがあったが,メルト包有物でも明瞭に異なる事(SiO2=68~70 wt.% vs. 71~74 wt.%),さらに斜長石,輝石組成幅でも異なることを確認した。単斜輝石温度圧力計,角閃石温度圧力計,両輝石温度計などで,大峰マグマの噴火前温度920~970℃,圧力1.3~1.5kbar(深さ5~8km)の推定値を得た。また含水量の推定については,メルト包有物のFT-IR分析によって大峰スコリアが1-2 wt.%, 小谷軽石が3-5wt.%という値を得ていたが,斜長石-メルトの含水量計による計算でも,ほぼ同じ傾向になることを確認した。揮発成分の違いが,溶岩流主体の噴火と大規模な火砕噴火の違いに結びついたと推測した。
前駆噴火として阿蘇4火砕噴火の約9千年前に噴火したAso-A,B,C,D一連のテフラの軽石および火山灰(3.5 km3)を研究テーマとして追加した。試料の全岩組成,鉱物組成,メルト包有物組成を分析し,阿蘇4小谷軽石と比較した。Aso-A,B,C,D軽石の全岩化学組成は阿蘇4よりもややSiO2に乏しく,メルト包有物組成はSiO2=70-72 wt.%で,K2Oなどに着目すると阿蘇4ではなく,阿蘇3にほぼ一致することがわかった。斜長石の組成も阿蘇4ではなく,Kaneko et al. (2015)が報告した阿蘇3の組成に近いことがわかった。9千年では阿蘇4の準備過程には至っていないと結論される。単斜輝石温度圧力計で860-950℃,圧力は1.1-2.7 kbarの推定値を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

おおむね順調に鉱物分析,メルト包有物分析やデータの解析が進んできた。しかし阿蘇4軽石,スコリアの分析を論文研究のテーマとしていた学生が平成30年度から休学することになった。野外調査,メルト包有物分析,EPMA分析などを始めていた矢先なので,今後どのように研究計画の分担を変更すべきか,検討中である。

今後の研究の推進方策

今年度の計画で達成できなかった阿蘇4軽石試料の分析を集中的に行い,鉱物-メルト相平衡から温度,圧力などの推定値を得たい。また当初計画の通り,後カルデラ期で最大規模の噴火である草千里ヶ浜火山の軽石の分析,後カルデラ期,特に最新期で活発になった玄武岩試料の分析を行い,マグマ供給系での深部マグマと浅部マグマの相互作用を明らかにしたいと考えている。玄武岩試料は杵島岳,往生岳,米塚,上米塚,中岳である。またカルデラ期にもWatanabe (1978) が弁利スコリア流,九ノ峰スコリア流を記載しているので,それらの分析も行い,物理化学的パラメータの推定を行いたいと考えている。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] The effects on Aso volcanic edifice by 2016 Kumamoto earthquakes2017

    • 著者名/発表者名
      Tajima, Y., Hasenaka, T., Torii, T.
    • 雑誌名

      Earth, Planets and Space

      巻: 69 ページ: ?-?

    • DOI

      10.1186/s40623-017-0646-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 阿蘇3,阿蘇4間テフラに含まれる鉱物中のメルト包有物 --カルデラ噴火前のマグマ供給系の推定--2017

    • 著者名/発表者名
      杉山芙実子・長谷中利昭・安田敦・外西奈津美・森康
    • 雑誌名

      月刊地球

      巻: 号外68 ページ: 74-79

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 阿蘇-4火砕噴火直前に噴火した大峰火山 -メルト包有物からみるマグマ供給系の変遷-2017

    • 著者名/発表者名
      椎原航介・長谷中利昭・安田敦・外西奈津美・森康
    • 雑誌名

      月刊地球

      巻: 号外68 ページ: 80-85

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] メルト包有物からみた阿蘇火山における玄武岩質マグマの揮発性成分含有量2017

    • 著者名/発表者名
      川口允孝・長谷中利昭・安田敦・外西奈津美・森康
    • 雑誌名

      月刊地球

      巻: 号外68 ページ: 86-91

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 阿蘇-4火砕噴火直前に噴火した大峰火山.メルト包有物組成からみるマグマ供給系の変遷2017

    • 著者名/発表者名
      長谷中利昭
    • 学会等名
      JPGU-AGU
  • [学会発表] 阿蘇における浅部マグマ溜りへの高硫黄濃度玄武岩質マグマの注入2017

    • 著者名/発表者名
      川口允孝
    • 学会等名
      JPGU-AGU
  • [学会発表] 阿蘇・草千里ヶ浜軽石の鉱物・メルトの化学組成 - Aso-4との比較-2017

    • 著者名/発表者名
      永石良太
    • 学会等名
      JPGU-AGU
  • [学会発表] Petrological constraints on the precursory event of Aso-4 caldera-forming eruption2017

    • 著者名/発表者名
      Hasenaka, T.
    • 学会等名
      IAVCEI meeting
  • [学会発表] かんらん石に捕獲された阿蘇玄武岩質マグマの揮発性成分含有量2017

    • 著者名/発表者名
      川口允孝
    • 学会等名
      日本火山学会2017年秋季大会
  • [学会発表] 阿蘇・草千里ヶ浜火山のマグマだまりの温度圧力条件:鉱物・メルト包有物組成による推定2017

    • 著者名/発表者名
      永石良太
    • 学会等名
      日本火山学会2017年秋季大会
  • [学会発表] 阿蘇火山,草千里ヶ浜軽石の鉱物化学組成2017

    • 著者名/発表者名
      永石良太
    • 学会等名
      国際火山噴火史情報研究集会

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公開日: 2018-12-17  

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