研究課題
阿蘇4火砕噴火初期の小谷軽石中のメルト包有物組成の再検討,およびマグマ溜り深度の推定を行った.阿蘇4層状マグマ溜りを仮定すると,小谷軽石流は最上部(最初期)の肥猪火山灰流の下の主要部分を占める.これまでの分析通り,二つの組成に集中が見られたが,SiO2に富む部分は斜長石の,SiO2に乏しい部分は角閃石,直方輝石のメルト包有物が多い.マトリックスガラスは両者と同様の組成を持つ.少数だが,さらにSiO2に乏しく,カリウムに富むメルト組成が見つかった.総じてSiO2に富むメルトはSに乏しい傾向がある.角閃石,直方輝石中のメルト包有物と斜長石中のメルト包有物から求めた温度・圧力は明らかに異なる推定値を示し,斜長石が角閃石,直方輝石より低圧・低温で晶出したことを見出した.また低圧で捕獲されたメルトほどSiO2に富む傾向がある.Ishibashi et al. (2018) 同様,角閃石がより深部,おそらく10~15 kmで晶出し,より浅部のマグマおよびマグマから晶出した鉱物と混合したことが求められた.鉱物はマグマ溜りの異なる深さ,あるいは火道上昇中の異なる深さでpolybaricに晶出したことを示す.これらの推定結果は,後カルデラ期の噴出物におけるものと明瞭に異なる.阿蘇1の直前に噴出した先阿蘇火山岩類を阿蘇カルデラ西部において精査した.合計200以上の溶岩試料について化学分析を実施した結果,大部分は輝石安山岩あるいは角閃石安山岩だが,少数のかんらん石玄武岩~玄武岩質安山岩(高アルミナ玄武岩を含む),粗面デイサイト,粗面岩を見つけた.カルデラ形成期,後カルデラ期と比較して,組成変化範囲に大きな違いは見られないが,デイサイトが多く産するカルデラ期に対して先カルデラ期では安山岩が多く産することが重要な違いである.K-Ar年代測定により30万年前より若い先阿蘇火山岩が発見された.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
Proceedings of the 2019 International Conference on Climate Change, Disaster Management, and Environmental Sustainability
巻: 1 ページ: 273-278
巻: 1 ページ: 857-863
巻: 1 ページ: 321-325