研究課題
我々が進めてきた伊豆大島・阿蘇中岳・雲仙火山で採取した火山灰の予察的な測定結果によれば、火山灰の残留磁化の伏角は、当時の地磁気伏角と比べてほぼ同じものもあれば、いくらか浅いものがあった。一方で、火山灰の残留磁化の偏角は当時の地磁気偏角にほぼ一致している。この予察的結果は、広域テフラの火山灰層の残留磁化方位は、溶結凝灰岩の残留磁化方位と一致するという過去の研究結果とは、いくらか異なる。広域テフラと火山近傍の火山灰とは、構成粒子が異なることに違いの要因があるかもしれない。あるいは、火山灰層の露頭が何らかの地質学的効果(たとえば圧密)を受けたことが前述の違いに関係するかもしれない。調査地点周辺におけるローカルな磁気異常の程度も磁場観測により把握しておく必要がある。現段階ではこのような効果は例外的であると推察しているが、今後の研究では、火山灰層の残留磁化はどのような分布をもつか、もし地球磁場方位からずれる現象が起きるならば、その要因は何かを注意深く検討すべきことが明確になった。当時の地球磁場が火山岩や地磁気観測から精確に復元できることも重要である。以上を踏まえつつ,最終年度には開聞岳にて仁和噴火(西暦885年)の火山噴出物の調査を行った。仁和噴火の細粒火山灰層については,火口から東南東方向4-5kmに位置する2つの異なる露頭から採集した。併せて同じ噴火で噴出した火砕流堆積物を開聞岳山麓にて定方位採取した。火山灰試料と火砕流堆積物試料の古地磁気方位測定が完了次第,それそれから得られた残留磁化方位を比較して,火山灰の残留磁化の特徴を把握する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
火山
巻: 66 ページ: 187~210
10.18940/kazan.66.3_187
Earth and Planetary Science Letters
巻: 572 ページ: 117119~117119
10.1016/j.epsl.2021.117119