研究課題/領域番号 |
17K05684
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鳥井 真之 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 特任准教授 (40711908)
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研究分担者 |
北園 芳人 熊本大学, 大学院自然科学研究科, 名誉教授 (40094007)
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
西山 賢一 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (60363131)
磯部 博志 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (80311869)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熊本地震 / テフロクロノロジー / 斜面崩壊 / 火山層 / 活断層 / 地震動 / ノンテクトニック断層 |
研究実績の概要 |
調査対象となる南阿蘇村では災害復旧事業が進行中であることから,地震による崩壊地とその周辺での地層断面の観察が可能になった.これまで,南阿蘇村の高野台(高野尾羽根火山)で発生した緩斜面での崩壊では,草千里ヶ浜降下軽石層(Kpfa)がすべり面を形成していると考えられていたが(佐藤ほか,2017など),新たに現れた法面では,表層部の厚さ約10mがシート状に滑動し,Kpfaのみならずテフラ層の様々な層準ですべり面が形成されていることが明らかとなった.これは崩壊原因が必ずしも軽石層ではないことを示している.また,河陽では,地表地形に亀裂などの変状がない緩斜面での掘削面において,累重するテフラ層が縦の柵状(スライス状)に断裂し並ぶ特徴的な構造が認められた.この柵状構造は掘削面にて150m以上側方へ連続的に確認でき,直下の溶岩には断層などの明瞭な変異が認められないことから,その成因は地震断層に直接由来するものではなく地震動によるノンテクトニック断層と考えられ,緩傾斜斜面崩壊での先駆的現象の可能性がある.そこで観察事例を増やし比較検討を行うために,緩傾斜かつテフラ層が累重し,擁壁崩壊が多数発生した益城町木山においてトレンチ調査を行なった.その結果,擁壁崩壊は切土,盛土境界での崩壊であり,テフラ層中の変形は,部分的な流動化と開口亀裂が認められるのみで,シート状の滑動や柵状構造は認めることができなかった.これら露頭観察からは,テフラ層を主体とする緩斜面崩壊メカニズムは多様であることから,崩壊条件の特定にはさらなる調査分析が必要となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
復旧工事が本格化し大規模な掘削法面が多数出現したことから,露頭記載にリソースを割かざるを得ない状況にあった.しかし,ボーリングコアのみでは把握しにくい地下構造が明瞭になったことにより,崩壊メカニズムの理解に大きなプラスとなったが,その反面,崩壊メカニズムの複雑さを認識することともなり,これまでに得られた火山層序を活用しさらなる詳細な調査解析が必要となっている.それ以外については,斜面変動や活断層の解析も具体的に進みつつあり,カルデラ壁での斜面崩壊については西山ほか(2018),緩傾斜から平坦地での地盤変状については,横田・鳥井(2019),そして,阿蘇カルデラ内で新たに見つかった地表地震断層の活動履歴については遠田ほか(投稿中)など,これまでに得られた成果は既に公表段階にあり,研究は概ね予定通り進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
令和元年はこれまでの成果をまとめ総括をおこなう. これまでの研究で得られた火山層序を基準とし,さらに14C年代測定を追加することで斜面移動の時期・形態の解析と地震との因果関係の理解をすすめる.テフラ層からなる緩傾斜斜面崩壊については,2018年北海道胆振東部地震により厚真町を中心として発生した斜面崩壊との類似性が認められることから,熊本地震との比較も検討する.緩傾斜斜面崩壊のメカニズム解明は本研究期間のみでは完了できない可能性もあるが,今年度も大規模な復旧工事が予定されていることから,情報収集と保存のため掘削面の記載と試料採取は引き続きおこない,今後の展開に備える.
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次年度使用額が生じた理由 |
14C年代測定試料の選定において,令和元年度採取予定の試料との比較検討する必要が生じたため使用を次年度とすることにした.
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