研究課題/領域番号 |
17K05685
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
佐々木 圭一 金沢学院大学, 基礎教育機構, 准教授 (50340021)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 化石サンゴ礁 / ターミネーションⅡ / サンゴ礁性石灰岩 / 海面変化 / 喜界島 |
研究実績の概要 |
15万~12万年前の融氷期『ターミネーションⅡ』において一時的な海面低下イベントが本当に起きたのか?この課題は,第四紀の気候変動メカニズム解明に大きな影響を与える.本研究プロジェクトは,活発な隆起でこの年代の化石サンゴ礁が陸上に分布する琉球列島喜界島と波照間島を対象に「一時的海面低下に伴って不整合面が形成された」仮説を検証し,海面低下時期と規模を高精度で復元することを目指している.プロジェクトの第1段階として本申請課題では,露頭精査とボーリング掘削調査によりこの時代の地層の三次元的岩相層序の確立を目指している. 今年度は,予備的な調査の進んだ喜界島において露頭精査と浅層ボーリング掘削調査を実施し,以下の成果を得た.(1)高位の百之台段丘エリア(浅い環境)での基本的な岩相層序(下位から,ロドリス石灰岩/サンゴ石灰岩/生砕屑性石灰岩/オパキュリナ石灰岩/ロドリス石灰岩)を確立し,相対的海面変化(浅海化後に深海化した)を復元した.そしてサンゴ石灰岩の層厚変化が激しく,パッチ状に分布することが明らかになった.(2)低位の川嶺段丘エリア(深い環境)では,ロドリス石灰岩/コケムシ石灰岩/ロドリス石灰岩の変化が見られ,高位で復元された相対的海面変化と同様の変化が復元された. 波照間島においては,地形と放射年代に関する先行研究を参考に露頭精査を行い,対象となる酸素同位体ステージ5eのサンゴ礁堆積物の分布を明らかにして,ボーリング掘削地点の選定を行った. なお喜界島では,アウトリーチ活動として,喜界島サンゴ礁科学研究所主催の小中学生対象の「喜界島サンゴ礁サイエンスキャンプ2018」および一般向けジオエコツアー「巡検!喜界島~地質学視点で見る喜界島~」で講師を務めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請課題の主要な研究方法である現地調査が,天候の影響を受けて研究初年度から予定を変更せざるを得なくなったためである.昨年の喜界島への台風直撃とその後の集中豪雨の影響で先送りになった,喜界島でのボーリング掘削調査と波照間島でのサイトサーベイまでは実施できたものの,当初2年目に予定していた波照間島でのボーリング掘削は実施できなかった.日程的な制約と,新鮮な露頭が露出する崖崩れ地点の調査を含め喜界島における調査を優先したためである.その結果,喜界島における層序の組み立てと岩相の三次元的な分布を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度は,喜界島におけるMIS-6~5e(15~12万年前)の化石サンゴ礁について詳細な三次元的岩相層序の確立を優先させる.これまでの露頭およびボーリング掘削調査により,喜界島における三次元的岩相層序の概要は明らかにできたが,「一時的な海面低下イベント」を検討するためには更に詳細な岩相層序や分布,構成生物化石を検討する必要がある.そのために,これまでに採集した試料に関して,計画に従い石灰岩薄片の顕微鏡観察とサンゴおよび有孔虫化石の分類・同定を更に進める.また化石サンゴ礁がパッチ状に分布している可能性が示されたため,更に喜界島でのボーリング掘削調査を行う.それらの成果を総合して詳細な三次元的岩相層序を組み立て,論文として発表する. 一方,波照間島に関しては,露頭調査と薄片観察を継続し,岩相層序とサンゴおよび有孔虫化石群集の検討を行う.当初予定していたボーリング掘削調査は,プロジェクトの次の段階(ウラン系列年代に基づくtime-rockユニットの認定)での実施を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に計画していた波照間島でのボーリング掘削調査が実施できなかったため,その予算分を繰り越している.次年度は,その繰越金で喜界島におけるボーリング掘削調査を実施し,それ以外については,基本的に当初の計画に従って研究費を使用する.
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