研究課題
本年度は,(1)ペレ火山噴出物採取及び海底掘削試料及びペレ火山陸上部採取試料の分析解析を実施する,(2)国内の火山体崩壊を起こす火山(磐梯山,浅間山等)についての調査を開始する,ことを計画した.(1)の調査については,2018年2-3月に,フランスの共同研究者らとともに実施した.目的は,1)火山体崩壊イベント前後の火山噴出物及び14C年代測定用試料の系統的採取,2)掘削試料に認められる火砕流の噴出位置及び山体崩壊の発生位置と時期を特定するための地質調査,であった.調査ではペレ火山の約25000年前の山体崩壊イベントの前後の火山噴出物を中心に試料採取を行った.また数地点において噴出物とともに木炭等の14C年代測定用試料を採取,これまでに3000-20000年前の年代を得た.現在噴出物の化学組成及び40Ar/39Ar法による直接年代決定の準備を行っている.これらの分析が完了すれば,山体崩壊イベント前後のマグマの化学組成変化を解明できると考える.一方(2)については,浅間山火山で2回,磐梯山火山で1回の調査,試料採取を実施した.その結果,浅間山火山では複数地点の露頭で約23000年前の山体崩壊イベントの前後の噴出物の採取に成功した.分析作業を進めており,マグマ化学組成の時間変化が明らかになりつつある.磐梯山火山については,予察的な試料分析を実施,より時間分解能を高めた研究が可能か,検討を行っている.
2: おおむね順調に進展している
29年度に当初予定していたフィールド調査については,海外,国内とも予定通り実施できた.また分析作業も順調に進んでいる.ペレ火山においては露頭がやや乏しいこと,浅間,磐梯両火山については,噴出物の風化がやや問題になっている.取得データの検討により,これらの影響を精査しているところである.
29年度に大量に取得しているデータの解析は30年度に完了,学会講演等で順次成果発表を行っていく.また解析結果に基づき,必要な追加のフィールド調査を実施する(浅間,磐梯山火山).それ以外に山体崩壊を起こし,その前後の噴出物を採取できる火山について可能な範囲で予察的な調査を行い,本研究に必要なデータの取得が可能か検討する.当初申請に記載した渡島大島調査については,採択額内で30年度に調査が可能か,あるいは次年度実施とするか検討する.
海外調査の際の航空券代や現地で必要になるレンタカー等の費用が当初見積額と異なったため,差額が発生した.また野外調査参加人数,日数の当初予定との差による差額が発生した.この差額については,30年度調査旅費に充当,より詳細な調査と密で系統的な試料採取を行うことを目指す.
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件)
Earth and Planetary Science Letters
巻: 481 ページ: 80~90
https://doi.org/10.1016/j.epsl.2017.10.023
Geochimica et Cosmochimica Acta
巻: 229 ページ: 85~111
https://doi.org/10.1016/j.gca.2018.03.007
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 18 ページ: 3576~3591
doi: 10.1002/2017GC006948